西洋医学×漢方医学のスペシャリスト、今津嘉宏先生が教えます! 漢方薬での治療はどんな人に向いている?【40代・50代、漢方の知識、基本のき① 後編】
Q3 煎じ薬のほうが効果が高いの?
A 大きな差はない 「1944年に東亜治療研究所で行われた漢方エキス製剤の比較臨床研究から80年が経過し、これまでに、いろいろと煎じ薬と漢方エキス製剤の効果が問われてきました。 その結果、煎じ薬と漢方エキス製剤の効果には、大きな差はないことがわかっています。 煎じ薬のほうが効果が高いと思われがちですが、天然の生薬のために起こる品質のバラつきや、煎じ方による抽出率の違いなどがなく、質が担保されることや簡便性など、エキス剤にも多くの利点があります」
Q4 同じ病名や症状でも、人によって合う漢方薬は違うの?
A “証”が違えば、合う漢方薬も違う 「漢方では、その人に合う漢方薬を選ぶときに、問診や診察で、前述したように、陰陽、虚実、表裏、気血水などがどのような状態かを確認して、“証”を決めます。 証とは、漢方での診断名を意味します(使う漢方薬に“~証”とつけて診断名にする場合も)。 “証”は人によって違うので、病名や症状が同じでも、証が違えば、処方される漢方薬も変わります。また、同じ人の同じ症状でも、診察のタイミングによって証が変わることがあり、その時々で違う漢方薬が処方されることもあります」
Q5 漢方薬での治療はどんな人に向いている?
A 老若男女、すべての人に効果を発揮する 「医療用医薬品として使われている漢方薬は、148種類あり、老若男女を問わず、さまざまな病気や症状に使われています。 漢方薬は特に女性に向いていると誤解されがちですが、男性にも、赤ちゃんにも、お年寄りにも、漢方薬は効果を発揮します」
Q6 漢方は効果が出るまでにどれくらいかかる? 長いこと続けないと効果がないの?
A 即効性のあるものもあれば、数日から数週間経過しないと、効果を実感しにくいものも 「漢方薬は、薬です。薬が症状を改善してくれるのは、薬に含まれる薬理作用を持つ成分が体に効果を発揮するからです。 その成分は、口の中の粘膜から吸収して数秒で効果を発揮するものから、大腸で分解され肝臓で代謝されて効果を発揮するものまであります。 つまり漢方薬には、数分で効果を実感する即効性のあるものから、数日から数週間経過しないと、実感しないものもあります。 特に女性の場合は、ホルモンの変化によって漢方薬の効果を実感しにくいため、2週間単位(低温期と高温期)で治療経過をみていくことが多いです」 いかがだろうか。奥深~い漢方の世界が、少しわかっていただけたかと思う。 前編<西洋医学×漢方医学のスペシャリスト、今津嘉宏先生が教えます! 漢方は未病の段階でも治療の対象。体質や状態に合わせて処方してくれる!>と合わせ、上記のようなことを知っておくと、いざ自分が漢方を取り入れるとき、どんな意味があるのか、どんなことに気をつければいいのか、理解度がぐんと上がるだろう。