「入居者さんのため」と言って”虐待”を続ける職員…「思いやり」が「憎悪」に変わる、恐ろしき『介護ストレス』とは
カギは「目的」と「目標」を取り違えないこと
「お年寄りを転ばせない」はひとつの目標であって、目的ではありません。施設介護の本来の目的は、「その人らしい生活を最後まで守り抜く」ということです。その目的の下に、「身体拘束をしない」という目標をもち、その上で「歩き回ることが好きなおばあさんを、転んで痛い目にあわせないためにはどうするか」を話し合うのが本来のあり方です。 「なんで歩きたいんだろう?」「いつ頃の時間帯に歩いているんだろう?」 「どんな言葉かけなら、戻ってくれるかなあ?」「それは無理やり引き戻すことにはならないかなあ?」……。 職員は「お年寄りを縛らない」という具体的な目標を共有することで、前向きに話し合うことができ、そこに工夫や創造が生まれる余地があります。 介護の現場に「絶対」ということはあり得ません。 「どんなに気をつけても、人は転ぶときは転ぶ。死ぬときは死ぬ。それが生きていくことだから。そうであっても、私たちは大切な人を見守り支え合う」 この視点や考え方を、信頼関係の下に家族と共有することができる職員は、生き生きと仕事をすることができます。 『「親御さんが死にかけたとき、治療は必要ですか」…入居前に介護職員が投げかけた、家族の“覚悟”を問う質問』へ続く
髙口 光子(理学療法士・介護支援専門員・介護福祉士・現:介護アドバイザー/「元気がでる介護研究所」代表)