「自分のことで精一杯で、気を遣えないんです」――誰かと一緒にいるよりは一人がいい、天海祐希の境地
50代に入ったら、すごく楽になりました
若い頃は、「女性」としての可能性に、気持ちが揺れ動くこともあった。 「50代に入ったら、すごく楽になりましたね。だって、20代から40代って、選択肢がまだまだたくさんあるじゃないですか、例えば子どもを産むとか。50代になると、物理的にも無理なことが増えてきて、選択肢がどんどんなくなっていくから、もうあるものから選べばいいわけ。若いと、『こんな可能性もあるんじゃないか、いや、やっぱりこっちかな……』とか、迷うことが大変だったりする。今はもう、めちゃめちゃ気楽ですね。家族にも誰にも振り回されることなく、自分が大好きな仕事を、思う存分できる。毎日、楽しくて仕方がない」 幼稚園のお遊戯会で、先生に「あなたは声が大きくてお芝居が上手ね」と褒められた時から、俳優になると心に決めた。夢を実現している今、ほかに何か展望を求めることもない。とにかく芝居が好きなのだ。 これまでの俳優としてのキャリアについて問うと、「キャリア? そんな大したものじゃない」と笑った。 「私は、何かすごいことをやってきたわけじゃないんです、本当に。できないことばかり。大失敗したことだって、ありますよ。舞台上でセリフを忘れるとか、もういろいろと……。周りの方のお芝居を見ながら、すごいな、どうして私はこんな風にできないんだろう、って考えたり。でも、毎日、一つひとつのシーンには全力投球です。『でも一生懸命だったもん!』って言い訳するために、一生懸命やる。自分はすごいなんて、満足したら終わりだと思うから。だから、この先のキャリアの方が、私にとっては大事。過去に何をしたかじゃなくて、これから自分がどう向き合うのかということの方が重要なんです」
主役を選んでいるわけではない
2000年代から、ほとんどの仕事が単独主演だ。「天海祐希」を看板に、数々の映画・ドラマをヒットさせてきた。トップ俳優であることに、重圧は感じないのだろうか。 「仕事をさせていただくことに、とにかく感謝しかないんですよ。私自身、“主役”にこだわっているつもりはありません。年齢的にも、あらゆる部分が変化していきますし、世の中のニーズも変わっていくと思う。だから年齢に合ったもの、自分がその時面白いと思う仕事があれば、なんでもやるつもりです。朝ドラ『おちょやん』ではポスターだけの出演でしたしね」