介護は“オイシイ商売”なのか?「老人は歩くダイヤモンド」高齢者を囲い込み利益を上げる経営者がいる一方で、真面目な事業者が“損をする”介護ビジネスの現実とは…
「介護は儲かる?」施設責任者が語った実情
では実際、介護ビジネスは儲かるのだろうか。2022年6月、ある医療法人が運営する大阪府内の老健を訪ねてみた。老健とは、要介護者が自宅で介護を受けながら生活できるようになるまでの間、リハビリなどを行いながら生活する宿泊型の介護施設を指す。 電気が消えた薄暗い個室に入ると、正面に窓、右手の壁側には大型のテレビが置かれていた。 「うちは、各部屋にトイレもついています」 そう言いながら、この施設の責任者・坂本浩二さん(仮名)は、部屋のカーテンを全開にして、「どうぞ、自由に見てください」と促した。 8畳ほどの室内の左手には介護用ベッドがあり、先ほどまで部屋の主である高齢者が寝ていたのだろうか、ベッドの上には、皺になった枕と丸まった掛布団、それに使いかけの箱ティッシュが無造作に置かれたままになっていた。 老健の入居費用は、さまざまな種類の介護施設の中でも最も安価とされる特養に次ぐほどの安さで、比較的利用し易いと言われている。例えば、この施設でかかる費用は、食事代などが込みの個室で、月額10万円前後だという。 ただし利用期間が限定されており、この施設の場合は最長3か月間しか利用できない。老健は病院を退院後、居宅介護を目指してリハビリをする要介護者のための施設だからだ。 ところが利用者の実態としては、特養に入居するための順番待ちをしている者が、一時的に入居している場合も多いという。 この老健は、1階の駐車場に介護用の送迎車が数台停車していなければ、外観は少し高級な分譲マンションと見間違えるほどだ。建物もよく掃除が行き届いているようで、清潔感がある。 坂本さんが働くこの老健の経営母体は医療法人だ。なぜ、株式会社ではなく、医療法人なのか。 「経営しているのが医師だからですよ。元々病院を経営しており、この施設もリハビリを主としています。また、医療法人だと医師の節税効果になり、相続対策ができる利点もあるんです。新しく分院も設立でき、介護事業にも進出できるため、経営面でもメリットがあるからです」 事実、同法人は関西地方の広い範囲で病院、老健、デイサービス、サ高住、グループホームなど、複数の介護施設を手広く経営している。