「糖尿病性腎症」の食事療法を医師が解説! 運動・生活のコツや注意点もご紹介
糖尿病の3大合併症の中に「糖尿病性腎症」があります。なぜ糖尿病で腎臓に障害が出てしまうのか、発症・進行しないためにはどうしたらいいのか、「まごめ内科・腎クリニック」の井上先生に解説していただきました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
糖尿病が進行して腎臓が悪くなる、合併症で糖尿病性腎症を招く理由とは?
編集部: まず、糖尿病について教えてください。 井上先生: 血糖値を下げる働きのある「インスリン」というホルモンの働きが不十分となることで、血糖値の上昇した状態が続くのが糖尿病です。令和元年に厚生労働省が実施した「国民健康・栄養調査(※)」によると、国内の糖尿病患者数(糖尿病が強く疑われる人を含む)は約1196万人と推定されています。これは成人の10人に1人以上に相当します。初期は無症状のため放置されがちですが、気がついた時には身体に深刻な合併症が広がっているというのが糖尿病の特徴であり、恐ろしい点です。 編集部: どのような合併症があるのですか? 井上先生: 「糖尿病神経障害」「糖尿病網膜症」「糖尿病性腎症」が、糖尿病の3大合併症と言われています。また、血流や感覚が悪くなって足の潰瘍になる人や、動脈硬化などで心疾患や脳血管疾患を引き起こす人も多いですね。 編集部: そのなかで、糖尿病で腎臓が悪くなるのはなぜでしょうか? 井上先生: 高血糖が長期間続くと、腎臓の微小血管などがダメージを受け、腎機能に影響を及ぼします。透析が必要となる慢性腎不全の原因も、以前は「慢性糸球体腎炎」という疾患が1位でしたが、1998年から糖尿病性腎症が1位となり、現在まで続いています。
糖尿病性腎症を悪化させないための食事療法・栄養管理のコツやおすすめ食材とは?
編集部: 腎臓疾患が進行すると透析が必要になってしまうのですね。 井上先生: はい。腎臓は主に体内の老廃物や余分な水分を取り除き、尿を作ることで、体内の毒素や余分な物質を排出する機能を持っています。これらがうまく機能しなくなると、初期は「タンパク尿」となり、進行するにつれて徐々にむくみや倦怠感などが表れ、最終的には尿毒症を発症し、透析治療をおこなわないと死に至ります。 編集部: そうならないための治療のポイントを教えてください。 井上先生: 血糖値や血圧をコントロールするのはもちろんですが、症状が初期の段階から定期的に検査を受け、専門医からの指導をコツコツと実践し、正しい治療を継続することが大切です。治療内容としては、糖尿病治療薬や降圧剤の服用に加えて、血糖値を下げる基本の治療である食事療法・栄養管理や運動療法も重要です。 編集部: 食事療法では、どんなことをするのですか? 井上先生: 主に血糖値と体重のコントロールをしていただきます。糖尿病性腎症が発症する前は、血糖値を上げる要因の1つである炭水化物を控え、タンパク質や食物繊維を摂取すること、過剰な脂肪や塩分の摂取に気をつけることなどを実践していきます。また、食事内容だけでなく、食事のタイミングや食べる順番なども大事です。糖尿病性腎症を発症した場合には、また別の指導となっていきます。 編集部: 具体的には? 井上先生: 糖尿病性腎症を発症すると、塩分やタンパク質、カリウム・リンを摂りすぎないことが大切になってきます。さらに、糖尿病性腎症のステージが進むと、カロリーは十分に摂取していただき、タンパク質の摂取を制限していきます。