長友佑都と久保建英が交わした約束とは?
2つ目は畏敬の念だ。バルセロナの下部組織で活躍していたこともあり、初めて出会ったときから久保は常に注目される存在だった。多感な年頃でありながら、進むべき道をまっすぐに見つめてきた姿勢を「尊敬に値しますよね」と言い、こう続けた。 「能力は明らかに高かったけど、あれだけ期待されながら成長していくのは簡単ではない。それでも彼は勘違いすることなく努力を続けて、17歳という若さでここまで来たのだから」 最後にして最大の思いは危機感となるだろう。新しい選手が招集されれば誰かが居場所を失うのが、弱肉強食の世界の掟でもある。MF堂安律(FCフローニンゲン)とDF冨安健洋(シントトロイデンVV)にとどまってきた、東京五輪世代の台頭が久保を起爆剤にして加速されるかもしれない。 「どんどん若い選手が出てきている。僕たちベテランはプレーが悪ければすぐに落とされると思うし、だからこそまだまだ成長したい」 だからといって、悲壮感を漂わせているわけでもない。ポジションは与えられるものではなく、自らの力で奪い取るもの。そろって1986年に生まれた自身や本田圭佑、岡崎慎司が代表デビュー直後からプンプンとまき散らした、ギラギラした存在感はフル代表の進化に欠かせないと考えてきた。 若手が突きあげ、ベテランが抗う構図のなかで、初めて世代交代のうねりが加速される。危機感はむしろ歓迎すべきもの、と言わんばかりに長友は言葉を弾ませている。 「日本代表が夢の場所というのは、僕が子どものころから変わらない。ワールドカップで何回プレーしても、日の丸を背負う刺激的な毎日はやめられません。ここに残っていたいし、だからこそ建英たちから学び、吸収することで僕もまた進化したい」 前日にJ1リーグを戦った国内組は、初日は完全別メニューで調整した。冒頭15分以降を非公開で行う3日の練習から、いよいよ同じピッチで共演する状況が生まれる。脳裏に描いている具体的なイメージを、長友はジョークまじりにこう明かした。 「建英がボールをもったら僕は走りますよ。以前に俊さん(中村俊輔)から『タイミングが悪い』と怒られたことがあるので、建英に怒られないように、とにかくいいタイミングで走ります」 実は2日午前に名古屋へ向かう同じ新幹線に2人は偶然乗り合わせていた。何かに引き寄せられているような2人の間では、エルサルバドル代表戦(ひとめぼれスタジアム宮城)を終えて解散する9日の夜まで、お互いを刺激し合う濃密な会話が交わされていくはずだ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)