エンターテイメントとF1の融合で大注目。RB、レッドブルのDNAを受け継ぎ独自路線でF1人気支える
レッドブルの姉妹F1チームであるRBは、ハリウッド映画『ツイスターズ』のプロモーションを行なうなど、スポーツとエンターテイメントの融合を推し進めており、レッドブルとは別の路線を歩んでいる。 【動画】20年でF1マシンはどれだけ変わった? レッドブル、2005年RB1と2024年RB20を雨のシルバーストンで走行比較 レッドブルが展開しているファッションブランドであるアルファタウリの名を冠していたチームは、今季からビザ・キャッシュアップRBへと名称を変更。レーシング・ブルズあるいはイニシャルを使ってVCARBやRBと呼ばれている。 独自のイメージを打ち出そうという意気込みとは裏腹に、その名称がレッドブルと紛らわしいという論争がなかったわけではない。実際レッドブルのF1マシンはRBを使った名称がつけられている。 ただRBは、レッドブルとは違ったPR戦略を選んでおり、独自の路線を歩んでいる。 2005年にF1に初参戦したレッドブルは当時、豪華なパーティーや印象的なPR活動で知られ、F1における元祖ファンチームと言えた。2005年モナコGPではピットクルーがクローントルーパーのコスプレをして『スター・ウォーズ エピソード3』のプロモーションを行ない、その1年後にはデビッド・クルサードがスーパーマンのマントをまとって『スーパーマン リターンズ』のプロモーションを行なった。なおこのレースでクルサードは、チーム初の表彰台となる3位を獲得し、表彰台にもマントをまとった姿で登場した。 しかし、レッドブルが優勝を目指せるチームに成長してからは、”本業”に専念。そうしたプロモーションは行なわれなくなった。 一方でドライバーのダニエル・リカルドと角田裕毅が若いF1ファンの間で人気を博し、優良パートナーであるビザとキャッシュアップをタイトルスポンサーとして獲得したことで、姉妹チームであるRBはそのバトンを受け取り、走り出そうとしている。 今季開幕前のラスベガスで新たなアイデンティティを披露したRBのピーター・バイエルCEOは、若くフレッシュなアイデンティティを活かしてF1とオフトラックのエンターテインメントを融合させると発表した。 マイアミGPでは、アートが集まるウィンウッド地区の洗車場でイベントを行ない、カラフルなワンオフカラーを発表。イギリスGPの前にはワーナー・ブラザースと契約を結び、超大作映画『ツイスターズ』のプロモーションを行ない、レッドブルの伝統を受け継いだ。 これはバイエルCEOがチームと進めるオフトラックでの野望の第一歩に過ぎない。単にパートナーに価値をもたらすだけでなく、F1全体が積極的に追求しているより若く、より多様な層におけるチームの支持を拡大するためのものでもある。 「マイアミでのイベントは、我々が達成しようとしていることの、おそらく最良の例だった」 そうバイエルCEOはmotorsport.comに語った。 「我々は誰もが参加できるような活動でスポーツを民主化し、F1コンテンツと音楽、アート、カルチャーを融合させたいと考えている」 「映画『ツイスターズ』もそうだし、他にもいくつかの映画との提携が控えている。我々は音楽にも取り組み続ける。なぜなら、音楽は誰もが理解できる普遍的な言語のひとつだからだ」 「我々はF1以外でもいろいろなことを試みている。なぜならチケットが完売していたり、値段が高すぎたりして、多くの人がレースに来ることができないからだ。だから、若いターゲットグループには、私が思うほどまだサービスが行き届いていないと考えている」 「若いファン、女性ファンの参加こそ、我々は大きなチャンスだと考えているんだ」 「『ツイスターズ』の主演女優、デイジー・エドガー=ジョーンズに話を聞いたところ、彼女はNetflixのF1ドキュメンタリー『Drive to Survive』を見るために友達を集め、レースの結果やドライバーのニュースも追っているという」 「正直なところ、数年前には考えられなかったことだ。F1なんて、私のような連中が5人の友だちとビールを2、3杯飲むだけだっただろう!」 ではなぜRB(バイエルCEOはチーム名としてVCARBを好んでいる)が、スポンサーやハリウッドにとってこれほど魅力的な存在だと考えられているのだろうか? 「新たなスタッフが参加したことでこれまでとは違うことをやっていて、様々なオーディエンスに手を伸ばそうとしているからだと思う」と、バイエルCEOは説明した。 「F1は我々にあらゆる見識とデータを与えてくれる。私が記憶している限りでは、我々は男女のファン層のバランスが最も取れているチームであり、最も若いファン層を持っている。そして、それは映画にとっても完璧なターゲット層なんだ」 そうしたパートナーシップは、ほんの数年前ならレッドブルのものであり、姉妹チームのものではなかったと指摘されると、彼はうなずいた。 「そうだね。それがレッドブルのDNAの一部であることは明らかだ。レッドブルがパートナーシップを結ぶこともできただろうけど、単純に我々の方が合っているんだ」 「我々はいつもレッドブルのことを”兄貴分”と読んでいる。彼らはチャンピオンシップを戦っていて、大企業のパートナーも何社かあり、それに対応するために自由度が低い部分もある」 「(シルバーストンでは)すべてを迅速に行なう必要があって、我々にはまだそのスペースがあった。マシンの物理的な問題だけでなくね。我々にはツイスターズのようなパートナーシップに対応する能力があったんだ」 「まさにウィン・ウィンの状況だった。多くの人が相乗効果について話していたし、お互いに助け合い、協力し合うことができると話していた。実際のところ、技術的な面ではそれほど得るものはないが、コミュニケーションやマーケティングの面では、非常に有意義な形で協力する機会がたくさんあるんだ」 チームが商業的なレベルで行なっている取り組みは、F1とそのCEOであるステファノ・ドメニカリにも感銘を与えたとバイエルCEOは言う。 「トラック外での活動は続けていくし、エキサイティングなカラーリングの変更やローンチイベントも行なっていくだろう」 「F1は我々の活動に非常に協力的で、感謝している。ステファノとはよく話をする。彼とリバティ・メディアは、それによってこのスポーツが成長すると考えているからだ」 「シルバーストーンでのイベントを見てごらん。ファンフェスティバルは本当に素晴らしい。バンドのライブもあったし、これからもっともっと増えていくだろう」 「今やグランプリは、単なる週末のレース以上のものなんだ」
Filip Cleeren