琴桜が悲願の初優勝 大関同士の相星決戦制す 1月の初場所は綱とりに/九州場所
大相撲九州場所千秋楽(24日、福岡国際センター)琴桜(27)が大関同士の相星決戦で豊昇龍(25)をはたき込み、14勝1敗で初優勝を果たした。佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)の長男の琴桜は1月の初場所後に大関へ昇進。5月の夏場所から祖父で元横綱のしこ名を継いだ。年6場所のうち5場所で2桁白星を挙げ、今場所は自己最多の勝ち星をマーク。今年は66勝を挙げて初の年間最多勝も達成した。来年の初場所は1月12日から東京・両国国技館で行われる。 やってきたことを信じるしかない。一年納めの千秋楽結びの一番。21年ぶりの大関同士による相星決戦で、天命の軍配は琴桜に上がった。 「土俵へ上がるとき、自分が思ったより高ぶっていることがわかった。落ち着かせながら、集中していこうと…」 豊昇龍の突き、押しをあてがいながら、いなして崩す。相手の右上手投げを踏ん張って残し、豊昇龍が足を滑らせた瞬間に、はたき込んだ。九州場所は自身が初土俵を踏んだ地。母方の祖父で先代師匠の元横綱琴桜が最後の優勝を果たした昭和48年名古屋場所以来、51年ぶりに「琴桜」が賜杯を抱いた。 5月の夏場所で「琴ノ若」から改名した。祖父と同じ27歳、大関5場所目での初優勝も同じ。感激の瞬間は「がむしゃらだったので全然覚えていない。覚えているのは相手が土俵に落ちていたこと」と頬を緩めた。 今場所唯一の黒星を喫した3日目の夜。福岡市内の稽古場に琴桜の姿があった。負けたとき、勝っても納得がいかないとき、打ち出し後に部屋へ戻ってしこを踏む。東京場所でも、地方場所でも。その繰り返しをいとわない。1月の初場所で横綱照ノ富士との初めての優勝決定戦を経験。「優勝に近づいてもできなかった。辛抱してやっていけば賜杯を抱けることを実感できた」。 琴桜が支度部屋で使うバスタオルがある。平成17年九州場所13日目。先代師匠の祖父が日本相撲協会の定年を迎え、父で師匠でもある佐渡ケ嶽親方が年寄を襲名したときの記念でつくられ、先代が綱を締めたデザイン。現存するのは使用しているものだけ。大事に大事に使っており、祖父はいつも傍らにいる。 佐渡ケ嶽部屋では先代が横綱になって以降、琴風、琴光喜、琴欧洲、琴奨菊が大関に昇進したが、最後の夢をつかむことはできなかった。千葉・松戸市にある同部屋から1キロほどの「松戸霊苑」にある先代の墓前には、力士が数人立てる広いスペースが設けられた。横綱が誕生したとき、ここで横綱土俵入りができるように設計されているのだ。