なぜ巨大IT企業の「日本への建設ラッシュ」が起きているのか…「これからは中国より日本」というIT業界の本音
■揺らぐ自動車業界を支える次の基幹産業に 米国や中国も、AI分野での需要創出を目指して半導体やデータセンター関連分野の産業政策を実施している。米国はTSMCなどへの補助金を積み増し、迅速な工場建設と稼働を求めている。中国は、政府系ファンドの資金量を引き上げた。ただ、両国の課題は多い。サプライチェーンの集積の遅れ、人材不足、そして素材創出・製造技術の不十分さなど、一朝一夕に解決することはできない。 既存の製造技術を組み合わせて、AIに対応した高性能のチップを低コストで製造する。インテルが、わが国の企業とチップレット関連の共同研究・開発を行うのはそのためだろう。 ほぼ同じタイミングで、同社のアイルランド工場の部分売却も明らかになった。インテルは、イスラエルでの工場建設計画を中止するとの報道もあった。エヌビディアを追いかけるインテルは、わが国半導体産業を重視しているとの見方もある。 わが国の企業にとって、そうした変化を確実に収益につなげる重要なチャンスだ。重要なことは、成長期待の高い分野で設備投資や研究開発を積み増し、高付加価値の(まねできない)製造技術に磨きをかけることだ。その場合、政府の支援策の重要性も高まる。 足許、認証不正問題でわが国経済を支えてきた、自動車の生産体制はやや不安定だ。それを埋め合わせるためにも、半導体工場・データセンターの建設ラッシュを成長産業の育成、中長期的な経済の回復につなげることは重要だ。その意味では、今、わが国経済は重要な局面を迎えている。 ---------- 真壁 昭夫(まかべ・あきお) 多摩大学特別招聘教授 1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学院教授などを経て、2022年から現職。 ----------
多摩大学特別招聘教授 真壁 昭夫