J2残留かJ1復帰か「自分でもわかってない」 前例なき4年連続レンタル?…25歳が明かした悩める胸の内【コラム】
「ゴリさんがチームを一新させた中で、サッカー選手として、最も根本的な部分を教わった」
特に仙台では3年目の今季、絶対に忘れられない時間を過ごした。仙台を立て直した森山監督の熱血指導である。 「昨シーズンは選手が揃っていたのに、シーズンを通して残留争いの順位にいた。ゴリさん(森山監督の愛称)がチームを一新させた中で、サッカー選手として、最も根本的な部分を教わった。昨シーズンのような過ごし方をしていたら、もしかしたら自分は腐っていたかもしれない。今シーズンはチーム全体が活力を持って練習できたからこそ、自分もこうして結果を残せたと思う。サッカー選手をしている、という実感が湧いていたし、充実していたからこそ、ゴリさんを最後、喜ばせてあげられなかったのが本当に悔しい」 中島の記憶には、シーズン中のミーティングで目の当たりにした光景が鮮明に残っている。映像を使った段階になると、毎回のように「戦わないヤツはいらない」という森山監督のメッセージが画面の片隅に映っていた。技術や戦術の前に走る、戦うといった献身的で愚直な姿勢が疎かになっていたと気づかされた。 中島は続ける。 「サッカー選手として年も重ねていくなかで、大事な部分を見失ってしまうときもある。何気ない1日がどれほど大事なのかをゴリさんには教えてもらったし、それがあったからこそ、ここまで来られた」 引き続き森山監督のもとでプレーしたい思いが膨らむ一方で、自身の成長を3年間も待ってくれたセレッソの思いもわかる。いまなら、J1で戦う古巣で活躍できる自信もある。おそらく二者択一となるなかで、中島はこんな言葉も残した。 「交渉に対して動こうとは思っていない。多分、仙台も大阪も自分の気持ちをリスペクトしてくれているので」 額面通りに受け取ると、気持ちは仙台残留に傾いていると推察できる。ただ、4シーズン連続の期限付き移籍はおそらくあり得ない。完全移籍へ向けたクラブ間交渉に委ねる意向も明かした中島は、同時に「もうちょっと考える時間がほしいというか、正直、まだ何とも言えない」とも付け加えた。来季に向けた両チームの編成を考えれば、残されている時間はそれほど多くない。まずは自身の最終的な気持ちを決めるまで、思い悩む時間が続いていく。 [著者プロフィール] 藤江直人(ふじえ・なおと)/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。
(藤江直人 / Fujie Naoto)