小さな赤ちゃんの命を救う「ドナーミルク」 課題は? 利用者の声は?
■クラウドファンディング達成で施設をリニューアル
2023年11月から約2か月間行われたクラウドファンディングでは、目標金額を上回る2400万円以上が集まり、「日本橋 母乳バンク」は下記の通り大幅にリニューアルされた。 ・最新の低温殺菌処理器を購入し、処理力が約3倍に ・手術室レベルの清潔度の作業スペースが約2倍に拡大 ・冷凍庫や冷蔵庫、クリーンベンチなどを増設 ・蓄電池を増設し、震災などによる停電時でも対応可能 リニューアル前は9割の稼働率で、万が一機械に不具合があった場合はドナーミルクの生産が止まってしまう状態だったが、最新の低温殺菌処理器が手に入ったことでバックアップ体制が整い、需要の増加にも対応できるようになった。
■喫緊の課題は運営の資金と体制
クラウドファンディング分を除いては、日本母乳バンク協会は赤字運営。収益は病院からのドナーミルク利用料や寄付によるものが中心で、イギリスから輸入している消耗品が高騰していることが大きく影響している。 さらに、資金難の影響で運営スタッフが不足しているという。現在は常勤者2名(事務1人と低温殺菌処理を行う1人)のみ。どちらかが体調不良などで欠勤する場合、供給が止まるリスクもある。そのため最低もう1人は常勤者が必要だが、雇用する資金がないという。
ドナーミルクの利用施設数は現在、約100まで伸びている。出生体重1500g未満の赤ちゃんの中で、生後24時間以内にお母さんから母乳が出ないなどの理由で、一時的にでもドナーミルクが必要な赤ちゃんは、推定約5000人いるとされる。 水野医師は、小さく生まれてきた赤ちゃんが、他の赤ちゃんと同じように大きく元気に健康に育つためにドナーミルクは必要と説明した上で、「一人一人、大切な命。これを守るためには、母乳バンクが絶対に広がっていかないといけない」と語り、活動への理解と協力を求めた。