小さな赤ちゃんの命を救う「ドナーミルク」 課題は? 利用者の声は?
■ドナーミルクの安全性は?
現在、日本で作られているドナーミルクについて、水野医師は「これまで2500人以上の赤ちゃんがドナーミルクを使用したが、誰一人として問題は起きていない」と強調した上で、「日本のドナーミルクは世界トップレベルの安全性が確保されている」とした。根拠は下記の通り。 ・手術室レベルの清潔度が確保された室内で作業が行われる ・ドナーミルクの分注など、外気に触れる作業はさらに清潔度が高い「クリーンベンチ」と呼ばれる機械の中で行われる ・冷凍庫、冷蔵庫、低温殺菌処理器、全ての工程で厳重な温度管理がされている ・「ボールペンの点」ほどの大きさのゴミも見逃さないよう、各工程において目視で確認している ・ドナーミルクを作る前後で行う検査の基準は、世界で最も厳しいものを採用している
■利用者の声「1年前はこんなふうに過ごしているなんて思っていなかった」
実際にドナーミルクを使用した人の声はどうだろうか。 岡野さん(仮名)は予定より約3か月早く、678gの男の子を出産した。子どもの成長や母乳の出る量によってドナーミルクを適宜使用し、約6か月間、ドナーミルクを使用した。 岡野さんはもうすぐ1歳半になる息子を見ながら「今はもう普通の子たちと一緒に保育園に行って遊んで、帰ってくる。1年前はこんなふうに過ごしているなんて思っていなかった」と話した。 続けて「母乳が足りなかったり出なかったりしても、大丈夫なんだと思ったら、気持ちの余裕がでた」と、心理的な部分でもドナーミルクの存在は大きかったという。 水野医師は、母乳が出ないお母さんの中には、プレッシャーや自責の念など、心理的な影響から母乳が出にくい人もいたが、ドナーミルクの存在が安心につながり、母乳が出るようになったというお母さんもたくさんいたと話す。 佐藤さん(仮名)は予定より約4か月早く、400gの女の子を出産した。母乳が出るまで5日ほどドナーミルクを使用したが、「初めて娘に与えるのが自分の母乳ではないという複雑な気持ちがあった」と話した。 続けて当時の心境について、「娘が生死をさまよっている状態で、子どもにとってできることは何でもしてほしい思いがあったので、迷わずに決断することができた」と話した。