小さな赤ちゃんの命を救う「ドナーミルク」 課題は? 利用者の声は?
「ドナーミルク」とは、全国の母親たちから寄付された母乳を低温殺菌処理して作られるもので、小さな体で生まれた赤ちゃんに提供され、命を救ってきた。 このドナーミルクを作っているのが「母乳バンク」で、運営を担う日本母乳バンク協会は、2024年5月27日で設立7周年を迎える。 5月13日には、この協会の「日本橋 母乳バンク」がリニューアルされた。最新の低温殺菌処理器が導入されるなど、大幅な供給量の改善が見込まれる。一方で、まだまだ課題があるという。どのような課題を抱えているのか。
■誰が必要としているのか?
ドナーミルクは、出生体重1500g未満で生まれた「極低出生体重児」と呼ばれる赤ちゃんに必要なもので、無償で提供されている。 日本では、2022年には極低出生体重児は5700人以上生まれ、2023年度にドナーミルクを使った赤ちゃんは1000人にのぼる。早産などが原因で小さく生まれた赤ちゃんは、母親のおなかの外で生活するための機能が未熟で、様々な病気(特に目と肺)にかかるリスクがある。そのため、赤ちゃんにとって「薬」ともいえる栄養満点の母乳を、出生後なるべく早く(12時間以内)から与えることが大切だという。 一方で、母親の体調が優れず母乳が出ない、薬の影響で母乳が得られないなどの場合、母乳が得られるまでのつなぎとして、ドナーミルクを使用することが有効になる。 仮に、腸が未熟な状態の赤ちゃんに、ドナーミルクではなく、牛由来の成分で作られた粉ミルクを与えた場合、消化吸収できずに腸が壊死(えし)してしまう「壊死性腸炎」を発症し、死に至る場合もある。もし助かったとしても、耳や目、身体発達などに様々な後遺症が残る可能性がある。 ドナーミルクを使用するもう一つのメリットについて、日本母乳バンク協会の代表理事である水野克己医師は「お母様にとって我が子に人工呼吸器を使ったり、中心静脈カテーテルを使うのは痛々しいもの。これらがすべて早く終わることができる。何もついていない我が子に早く向き合うことができる」とドナーミルクを使うことで、家族の心理的にも大きな安心感につながることを強調した。