子どもの性被害「加害者なくす」根本対策が必要な訳 世界から30年遅れ「日本版DBS」では性犯罪を防げない
世界から30年遅れの「DBS」の効果は疑問
現在、政府が検討中の「日本版DBS」の元になる「DBS」(Disclosure and Barring Service)とは、イギリスで導入されている前歴開示・前歴者就業制限機構が行う前歴開示のことで、就業の際に性犯罪歴などがないことを確認する制度だ。 日本では2021年12月に、こども政策の基本方針が閣議決定され、そこに日本版DBS創設が盛り込まれたことから動きが加速した。こども家庭庁の有識者会議の報告書では、DBS利用は学校・保育所・児童養護施設などに義務づけ、塾や学童クラブ等は任意。確認の対象は性犯罪の前科のみで、不起訴処分や行政による懲戒処分などは含めないとしている。 福井氏は、日本版DBSは「一般の人に問題意識を広げる啓蒙的な意味はあっても、効果は薄く、再犯は減らないだろう」と見る。 「DBSは性犯罪者を監視し排除することで再犯を抑止しようという方法で、海外では1980年代に始まったものです。その究極はアメリカ・カリフォルニア州の『ミーガン法』でした。これは性犯罪者の住所や犯罪歴などをホームページに公開し検索できるようにしたものです。しかし、世界的には監視と排除では再犯は防げないという見解が主流となり、現在は治療も含めた社会復帰に対策はシフトしています」 一方、学校の教員に向けては、2022年4月に「わいせつ教員対策新法」が施行された。それにより、児童生徒への性暴力等で懲戒免職となった教員の復職を厳しく制限する仕組みや、教員免許の失効者の情報をまとめたデータベースの運用が始まっている。 対策としては十分なのだろうか。「DBSと同様、監視・排除を軸とした対策は、先ほども言ったように効果は薄いのです。その意味において、新法でわいせつ教員が減少するとは思えません」と話す。 なぜなら、利用を義務づけたとしても「子どものいる場所」はなくならないからだ。前科のみが対象で不起訴や懲戒を含めないため、教員を免職になっても学習塾や家庭教師で教えることができる。そこで性犯罪を犯し教育現場から排除されても、子どもと接するほかの業種に再就職すれば、そこで再犯の可能性もある。 いくら監視・排除しても「別の場所に被害者が生まれるだけ。1つの職業における対策ではなく横断的な仕組みが求められています」。自分の職場・職種にさえいなければいい、ではすまされないのだ。