大谷翔平にも鈴木誠也にも「バッティングは負けたくない」…“ドラフト9位から這い上がった男”佐野恵太29歳が語る同世代スターへのホンネ
同世代・大谷翔平の活躍をどう見ている?
そんな中、同世代の選手の存在が発奮材料になっているという。 「いつも起きた頃には、ちょうど試合が終わっているんです」 メジャーリーグを席巻する大谷翔平のことである。大谷が打席に入る頃、佐野はまだナイトゲーム明けで眠っていることも多い。その結果を起きてから知ることになる。「接点は特にないのですが、同世代ですし」と明かすように、注目してきた存在だ。 大谷は6月に入ると、例年と同じようにアーチを量産し始めた。佐野に話を聞いた日も、やはりバックスクリーンに放り込んでいた。 「さっき、ニュースで(大谷が)ホームランを打ったというのは見ました」 同じ左打者である。参考になるかと訊けば、間髪入れず「もちろん」と返ってきた。そして、こう言い直す。 「参考になるというか、自分がやろうとしても難しいと思うところが多いですね。ノーステップのあれだけ無駄のないフォームで力強い打球を飛ばすのはすごく難しい」 さらに敬意を込めて言う。 「このフォームと、このスイングで、これだけの打球を飛ばせるのは本当にすごいと思いながら見ています」
大谷翔平にも鈴木誠也にも「負けたくない」もの
大谷は高校生の頃から同世代のフロントランナーだった。打っても投げても超高校級と騒がれ、王道の真ん中を歩んできた。 佐野は対照的だった。日が当たらないところから、自ら道を切り拓き、目の前に現れるチャンスをひとつずつ、掴んでいった。気づけば、眩しいところに立っていた。30歳を前にふと思う。 「高校、大学の時の自分が、30歳でプロ野球選手になっていると知ったらビックリすると思います」 だが、満足感はない。それは、こんな問いに対する答えから窺うことができる。 ――同い年の大谷翔平選手やカブス鈴木誠也選手にも「ここだけは負けない」ものはありますか。 「バッティングは負けたくないとずっと思っています。僕がちょうど試合に出始めた頃、多分、誠也が最後、(広島で)日本にいた頃だったんですよね。負けたくないって思いはありますね」 試合後の横浜スタジアム。仕事を終えた売り子たちが荷を下ろし、くつろいでいるなか、バットを持ちながら薄暗いアスファルトの通路を歩いていく男がいる。そしてライトスタンドの真下にある室内練習場に消えると、ほどなくして中から乾いた打球音が聞こえてくる。両足を平行にした打席での構えを従来のクローズドスタンスに戻し、いまはバットスイングの軌道を整えている。 「年々、変わってきていると思います。1カ月後に、まったく違うことをしているかもしれませんが、今はちょっと新しいことにも挑戦しながらやっています」 佐野恵太は今日もバットを片手に打ちにいく。“遅れてきた男”にとって、理想の打撃を巡る旅に終わりはない。 <前編からつづく>
(「プロ野球PRESS」酒井俊作 = 文)
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