大谷翔平にも鈴木誠也にも「バッティングは負けたくない」…“ドラフト9位から這い上がった男”佐野恵太29歳が語る同世代スターへのホンネ
「得点圏打率.059」を覆したサヨナラヒット
その2年前、レギュラーを窺っていた佐野には印象深い打席があるという。 「プロ2年目に初めてサヨナラヒットを打った時はすごく憶えています。あの打席から、自分の中で勢いがつきました。当時、一、二軍を行ったり来たりが続いていて、二軍落ちのプレッシャーがある中でも打てたのが自信になりました」 2018年6月29日の広島戦(横浜)は土壇場の8回に3点差を追いつき、9回も1死一、二塁のチャンスを迎えていた。ここで代打起用されたのが佐野である。初球でケリをつけた。アドゥワ誠が投じたチェンジアップをすくうと打球は右翼線をはずんだ。 この試合まで得点圏打率は.059だった。勝負どころの代打に抜擢される成績ではない。それでも、ラミレスは迷わなかった。佐野の力を買っていただけではない。重圧がかかる局面での心の強さを試していたのである。地位は人を作る。そのことをわかっていた監督のもとで、素質を開花させていった。
「もう30歳…驚きしかないですね」
今季の佐野は試行錯誤を繰り返している。昨季まで4年間務めたキャプテンの座を牧秀悟に譲り、プレーに専念する。だが、開幕当初からいい当たりが野手の正面を突く不運も目立ち、乗り切れない日々は交流戦後もつづく。スタメン落ちを味わい、打率は2割5分台を推移し、3本塁打(6月29日現在)。首位打者と最多安打のタイトルホルダーにとって満足できる内容ではない。 「まずは自分の状態をしっかり上げて、得点に絡んでいけるように、ピッチャーを助けられるように、と考えています。いい場面で、いい1本を出せるようにやりたい」 今年11月には30歳を迎える。 「もう30歳なんだっていう驚きしかないですね。まだプロに入ってから何年かしか経っていないくらいの感覚なんです」 光陰矢の如し。厳しい世界をひたむきに生きてきた証拠だろう。ゆるぎない地位を築いても、筒香が復帰し、ルーキーの度会隆輝も台頭し、絶えず競争にさらされている。
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