【ダービー】「ウマ娘」藤田晋社長の野望 シンエンペラーでダービーVから凱旋門賞へ
新皇帝即位の時が迫ってきた。「ウマ娘」で知られるサイバーエージェント社長の藤田晋氏(51)が、皐月賞5着の所有馬シンエンペラー(牡3、矢作)でダービー(G1、芝2400メートル、26日=東京)に初挑戦する。ビジネス界で日本のトップを走る経営者が、競馬界でも日本の頂点へ。日刊スポーツの特別インタビューで、馬主4年目で大一番へ臨む心境を明かした。【取材・構成=木村有三、木南友輔、桑原幹久】 【写真】フォーエバーヤングでUAEダービーに勝ち、トロフィーを掲げる藤田晋氏 ◇ ◇ ◇ 「あの頃の競馬は熱かったですよね」。藤田氏のダービー初観戦は、ウイニングチケットが制した93年にさかのぼる。 藤田氏 現地で、すし詰め状態で見ていました。東京競馬場で観客が興奮している時の空気感は、すごく気持ちがいいですよね。 あれから31年がたち、馬主4年目。選ばれし18頭が集う大舞台に、初めてたどり着いた。 藤田氏 馬社会に接するようになって、みんながダービーを目指しているのは明らかですし、それを基準に1年が回っているという感覚は伝わるので、本当にクライマックスという感じはしますね。 3世代目のシンエンペラーは2年前、仏ドーヴィル1歳セリで210万ユーロ(当時約2億9000万円)で購入した。 藤田氏 現地の矢作先生にお任せして選んでもらって、凱旋門賞馬の弟だと聞いた時は「高そうだな…」と。ただ、画面越しでもかっこいい馬体で、エンペラーという言葉が自然と浮かんできました。矢作先生から「この馬でダービーを取りましょう」と言われました。 JRAに登録された馬名由来には「真の皇帝、新しい皇帝」とある。 藤田氏 たまに聞かれますけど、僕の名前(晋の音読み)からではないです。実はシン・ゴジラからつけたんですよ。シンは造語なので。 馬名の通り、東京での初陣から強さを見せ、連勝でG3を制覇。順調にクラシック路線に乗ったが、1冠目の皐月賞は5着に敗れた。 藤田氏 本当に(坂井)瑠星くんがうまく乗ってくれて負けたので、力負けした感じでへこみました。でも矢作先生は「勝負付けは終わっていない。ダービーで逆転する」と言ってくれました。 “最も運のいい馬が勝つ”とは有名なダービーの格言。「験担ぎは一切やらないですよ」と笑ったが、誕生日前日の15日、美浦トレセン近くにある大杉神社境内の勝馬神社のお守りを、現地で必勝祈願した社員代表からプレゼントされた。 藤田氏 1レースだけ使えるお守りだそうなので、使わせてもらおうかなと(笑い)。ダービーを何回も勝つ人を見ていると、やっぱり競馬に愛されている、という要素が必要なのかなと思いますね。 ケンタッキーダービーで僅差の3着に入ったフォーエバーヤングと同じく、矢作師、坂井騎手とのタッグで挑む。 藤田氏 海外で長い時間を過ごして、瑠星くんは競馬オタクのうちの子どもと馬名しりとりで長々と接してくれたので、応援しています(笑い)。彼もダービージョッキーになりたいでしょうし、自厩舎の馬でG1を勝ちたい、という思いも強いと思うので、そういう意味でも勝ってほしいですね。 全兄ソットサスが制した凱旋門賞(G1、芝2400メートル、10月6日=パリロンシャン)には出走登録済み。世代の頂点に立てば、夢は広がる。 藤田氏 ダービーを万が一勝つようなことがあれば、間違いなく凱旋門賞に行くと思います。一応、もう予定には入れてありますよ。 「ウマ娘」効果も相まって、多くのファンが熱視線を送っている。 藤田氏 今回はだいぶ人気を落とすと思うので、気楽に応援ができると思います。まだ勝負付けは終わっていないと陣営は考えているので、ぜひ応援してください。 ■シンエンペラー前走より上昇 シンエンペラーはこの日、Cウッドと坂路で体をほぐした。担当の吉田助手は「デビューの頃から比べても半年たってパワーアップしている」と確かな成長を伝える。前走の皐月賞は状態的に上昇途上の段階で5着。今回はさらに上昇しており「心臓がしっかり鍛えられている。楽しみを持って迎えられるね」とレースを心待ちにしていた。 ■ウマ娘「大事に育てたい」 ○…サイバーエージェントの子会社Cygamesが開発、運営する「ウマ娘 プリティーダービー」にも、藤田氏は期待を込めた。「本物の競馬界にも受け入れられている感じがします。すごく丁寧にクオリティー高く作って、長寿IP(知的財産)、長く愛されるものになってきたと思うので、大事に育てたいなと思います」。24日からは初の劇場版「ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉」が公開される。 ◆藤田晋(ふじた・すすむ)1973年(昭48)5月16日、福井・鯖江市生まれ。青学大卒。98年に24歳で株式会社サイバーエージェントを設立。00年3月、東証マザーズに当時史上最年少の26歳で上場した。AbemaTV社長。子会社のCygamesが「ウマ娘 プリティーダービー」を開発、運営する。18年にJ1・FC町田ゼルビアのオーナーに就任。同年にプロ麻雀リーグ「Mリーグ」を発足させ、現在までチェアマンを務めている。