消費増税延期はあるのか――注目の「景気条項」とは
消費税が来年(2014年)4月には8%に、さらに2015年10月には10%に引き上げられる予定です。ところが、これらの時期に消費税増税は実施できないのではないかという声が上がっています。その根拠になっているのは、消費増税関連法の「景気条項」です。 財務省のホームページにある「消費税率の引上げに当たっての措置(附則第18条)」では、「経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。」と記されています。つまり消費増税を判断する時点で、景気が目標の成長水準に達していない場合などは、増税凍結も含めた見直しを行うというものです。 その努力目標として挙げられている数値は、名目経済成長率で3%、実質成長率で2%とされています。
8%への増税判断は今年秋
2014年の8%への消費増税を判断する時期は、参院選後の2013年秋ですが、増税の判断については自民党の中でも足並みの乱れが見られます。6月21日付の産経新聞によれば、甘利明経済再生担当相が19日に「今から延期するシナリオは持っていない」と述べる一方、高市早苗政調会長は20日の記者会見で、「秋の段階で経済指標が思わしくなければ、税率引き上げという判断に至らない可能性もある」と述べたそうです。 消費税増税の実施を前にして、なぜこのような条項が蒸し返されてきたのでしょうか? そもそも、この「景気条項」は、野田内閣時代の昨年8月に国会で成立した、消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法に盛り込まれた内容です。このときは成長率の実現を担保することで増税反対派・慎重派に歩み寄る修正を行ったものと見られています。 この条項は安倍政権になっても引き継がれており、安倍晋三首相は6月4日の参議院経済産業委員会でも、「(消費税増税法の)附則18条にのっとって、適切に判断していきたい」と述べています。 エコノミストの間には、消費税導入前の駆け込み需要が景気を押し上げるため、2014年の8%への消費増税は実施されるだろうという意見もあります。
2015年の「10%」はどうなる?
しかし2014年度はその反動で成長率が鈍化し、約0.1%のマイナス成長と見る予測も挙げられています。そうなると目標の成長率に届きませんので、2015年に消費税10%への再増税が実現できないことになります。 もし消費増税が延期されれば、政府が目標としている財政健全化の道も遠のくことになります。しかし景気が思わしくない状況で増税に踏み切れば、これに反対する声が強まることが予想されます。「これまでのところ、アベノミクスは成果を挙げています。しかし、消費税引き上げを急げば、せっかくの景況好転が台なしになってしまうかもしれません」(東京新聞社説、6月2日)との指摘もあります。