再送非伝統的政策は完全な代替手段にならず、2%目標への政策運営が適切=日銀レビュー
(見出しを修正しました) Kentaro Sugiyama [東京 19日 ロイター] - 日銀は19日、過去25年間の非伝統的金融政策手段の効果を分析した「多角的レビュー」を公表した。非伝統的な金融政策は、短期金利の操作による伝統的な金融政策の完全な代替手段にはなり得ず、可能な限りゼロ金利制約に直面しないように政策運営することが望ましいと指摘。景気悪化時に実質金利を引き下げられるよう小幅のプラスの物価上昇率を安定して実現していくことが重要で、引き続き2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向け金融政策運営をしていくことが適切とした。 2013年以降の大規模な金融緩和については、金融市場や金融機関収益などで一定の副作用があったものの、現時点で「全体としてみれば日本経済にプラスの影響をもたらした」と評価。一方、国債市場の機能度の回復が進まないことや、大規模緩和の副作用が遅れて顕在化することなど、今後マイナスの影響が大きくなる可能性には留意が必要とした。 大規模緩和については、量的・質的緩和を導入しなかった場合に比べて、13年度以降の期間平均で実質国内総生産(GDP)の水準にプラス1.3─1.8%、消費者物価(生鮮食品・エネルギー除く)の前年比ではプラス0.5─0.7%ポイントの政策効果があったと試算した。 日銀が採用してきたさまざまな非伝統的金融政策は、経済・物価を押し上げる効果を発揮してきたものの、定量的な効果は伝統的な金融政策に比べて「不確実」と指摘。今後、非伝統的な金融政策を用いる必要が生じた場合には、それがもたらす利益とコストを比較して判断していくことが重要とした。 多角的レビューの過程で行った意見交換では、大規模な金融緩和が財政規律の弛緩につながったという指摘もあったという。金融政策の目的は物価の安定であり、政府による財政資金の調達支援が目的の「財政ファイナンス」ではないことを明確にしていくことは、通貨の信認を確保して物価の安定を実現していく上で極めて重要との認識を示した。 日銀は23年4月、植田和男総裁が就任して初めての金融政策決定会合で1990年代後半以降の金融緩和策を多角的に分析することを決め、1年半ほどかけて調査・研究、意見交換を行ってきた。植田総裁は実施を決めた決定会合後の会見で、これまでの政策運営の理解を深めて将来に向けて有益な知見を得たいと説明していた。