食後の眠気は病気のサイン? バランスがよいとされる日本人の食事が「糖質過多でタンパク質不足」である落とし穴
糖質疲労#1
ランチの後、しばらくすると「眠くなる」「だるくなる」。あるいは十分に食べたはずなのにすぐに小腹が減る、集中力が途切れる、イライラする――。北里大学北里研究所病院副院長・糖尿病センター長の山田悟医師は、こうした体調不良を「糖質疲労」と名づけている。 【画像】たんぱく質:脂質:炭水化物の最適バランスは?
今、日本人の間で増えているこの症状の正体とは。山田氏の新著『糖質疲労』より一部抜粋、再構成してお届けする。
「手軽でおいしい」食事は糖質に偏りがち
現代社会はタイパ(タイムパフォーマンス)という言葉が生まれるほど、多くの人が最小の時間で最大のメリットを求めようとしています。それは、多くの人が多忙で、時間的なゆとりがなくなっていることの証左だと思っています。 結果として、朝食ぬきや早食いが習慣になっているという人が多くなっているように思います。 こうした食生活は、朝食でのたんぱく質・脂質摂取による血糖値上昇ブレーキをなくしているため、ランチ後の食後高血糖を起こしやすくしています。 また、それとは別に、女性によくみられるパターンとして、やせることを目的に、通常の食事を軽くしようとして、かえって間食が多くなり、間食によって糖質を過食ぎみという方が多くいらっしゃるように感じています。 実際、間食として手軽に食べられる食品は、多くが糖質中心の食品です。常温で保管できるおいしいものばかりを求めていると意図せぬうちに糖質過多になってしまうのかもしれません。たんぱく質や脂質の多い食品は冷蔵庫でないと保存しにくい食品が多い一方で、糖質中心の食品は常温で保存しやすいものが多いのです。 タイパやダイエットを意識して間食が多くなると、おのずと糖質摂取が増えやすいということはご認識いただきたく思います。 また、「バランスのよい食事」と称して、糖質過多の食事が推奨されているという現実があります。 一般的に「バランスのよい食事」というフレーズがあり、何らかの三大栄養素比率(たんぱく質:脂質:炭水化物でPFCバランスなどとも言います)によって万人の健康が増進されるかのように言われがちです。 たとえば日本では、日本人の食事摂取基準(2020年版)に「炭水化物50~65%、脂質20~30%、たんぱく質13~20%」がよいバランスであるかのように記載されています。しかし、これは本当なのでしょうか? 実は、欧米のガイドラインでは、万人にとってベストの栄養素比率は存在しないと明記されています。