「母の余命宣告」に男泣きした70代父、急死…想定外の展開に相続を焦る40代きょうだいに降りかかった〈まさかの事態〉
突然の相続発生に、頼みの税理士は「相続にはくわしくない」
父親の死は、山田さん姉妹にとってまったく想定外のことでした。 「あんなに気丈な父だったのに、本当にショックで…」 しかし、資産家の父親が亡くなれば、諸々の相続手続きが必要になります。10カ月という期限内に手続きを終えなければなりません。 「父が確定申告を依頼していた税理士先生のところに相談したのですが、〈相続手続きにはくわしくない〉といって断られてしまって。代わりに別の先生を紹介してもらうことになったのですが、さんざん待たされた挙句〈先方の都合がつかなくなった〉と…」 父親の予期せぬ死に動揺するなか、紹介の待ち時間やその後のサポート先探しなどで時間を取られ、申告期限までわずか1ヵ月となってしまいました。
意識不明の相続人がいる場合、遺産分割協議はどうなる?
筆者は提携先の税理士に申告期限まで1ヵ月という厳しい状況を相談したところ、税理士からは、まずは未分割(法定割合)による相続税の申告、同時に延納手続きが提案され、山田さんもそれを了承しました。 延納とは、一度に相続税が支払えない場合に分割で支払うことのできる制度です。この方法は、いくつかの条件を満たす必要があり、また、延納利子税もかかります。しかし、山田さんの場合は一度相続税申告をすませてから遺産分割協議をおこない、改めて更正の申告をするほうがよいと判断しました。 また、老人ホームに入所している母親は判断能力がないことから、遺産分割協議は家庭裁判所に成年後見制度の申立をしたうえで後見人を選任するなど、時間的余裕を作る必要がありました。 成年後見制度とは、本人の判断能力がない場合などにおいて、本人に代わり判断する人を決めてもらう制度です。財産に関することなど重要な判断をする必要があることから、山田さん本人が後見人として申立しました。 ただし、相続人のなかに後見人と被後見人がいる場合、遺産分割協議が利益相反為となってしまうため、後見人は被後見人のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません。特別代理人は、被後見人に代わって相続人の遺産分割協議に参加し、遺産分割協議書に署名・捺印することになります。