今、日本のアート書籍が海外で人気。ニューヨークの書店店主の買い付けに同行
ニューヨークの写真集専門書店「ダシュウッド・ブックス」。その店主であるデヴィッド・ストラトルが毎年訪れる、神田神保町の古書店街での買い付けに同行。「魚山堂書店」と「源喜堂書店」にて、お眼鏡にかなった本は? 「ダシュウッド・ブックス」店主の神保町めぐりに同行(写真)
魚山堂書店(ぎょざんどうしょてん)
1926年に建てられた大正モダニズム建築内の一室にあるアポイントメント制の書店。昨年まで神田古書店連盟の会長も務めた店主の伊藤俊一は90年代から写真集を専門に扱ってきた。 「魚山堂はコレクター向けのレアな本を多く揃えていますね」とストラトル。今回、ここでは荒木経惟の『写狂人大日記』やホンマタカシの『NEW WAVES』『TOKYO WILLIE』、ウクライナ人写真家ボリス・ミハイロフの『CASE HISTORY』などを購入した。東松照明の『おお! 新宿』も迷ったが、「高価格のため、今回は断念」。
魚山堂書店 住所:東京都千代田区西神田2-4-1 東方学会本館1F 15号 TEL.03-5211-6003
源喜堂書店(げんきどうしょてん)
国内外の美術や写真、工芸、建築、デザイン全般の古本を扱う。9階では古文書や浮世絵、書画なども販売。店主の古書愛あふれる手書き背表紙が書棚にずらりと並ぶさまは圧巻。 「毎回必ず立ち寄るので顔なじみで、好みも熟知してくれている。今回はブルース・ウェーバーの『サム』、荒木経惟の『美登利』初版、アーティスト河原温の『continuity/discontinuity 1963-1979』を購入。最近は写真集以外にもアートブック、インテリアやデザイン、建築関係のビジュアルブックなども選んでいます。河原は日本以外では見つけにくいから、貴重」
源喜堂書店 住所:東京都千代田区神田小川町3-1-9 TEL.03-3291-5081
「Dashwood Books(ダシュウッド・ブックス)」とは
ニューヨーク・ノーホーにある「Dashwood Books(ダシュウッド・ブックス)」は、世界のクリエイターたちを魅了する写真集専門書店だ。店主は、世界最高峰と称される写真家集団マグナム・フォトでディレクターを務めていたデヴィッド・ストラトル。この書店をオープンしたきっかけが日本にあることはあまり知られていないかもしれない。 「マグナムを辞めて、次は何をしようか?と考えていたとき、妻(スタイリストのアン・クリスチャンセン)が『T マガジン』の仕事で荒木経惟と東京で撮影するというので同行したんだ。そのとき、青山の『オン・サンデーズ』に行く機会があり、大きなインスピレーションを得た。ブックコーナーがアート本のブティックみたいで、品揃えがとても洗練されているのが斬新だった。当時ニューヨークのアート系書店といえば古本に特化したところが多かったから」 2005年、自身の蔵書を売るところからスタート。次第に日本の写真家や出版物にも人気があることがわかってきた。 「『ヒステリックグラマー』が作る本は装丁も美しく、ファッション業界の人に人気が高かった。マグナムで働いていた頃から、写真家のマーティン・パーやブルース・ギルデンなんかと一緒に神保町の古書店街を訪れていたんだ。ブルースは森山大道や荒木経惟のビッグコレクターだったね。神保町を歩いて書店を回ると、新しい本に出合う。大竹伸朗も実際に来たから知ることができた。100冊買うとしたら5 冊は新しい写真家のものを買うね。今回はホンマタカシを重点的に探しました」 今年はホンマとの出版プロジェクトが続く。ホンマタカシの『17』をダシュウッド・ブックスが版元となり刊行。秋にはセッション・プレスと共同で、文化人や一般の人などさまざまな日本人を被写体とした『Portrait of J』を刊行予定。写真家にとって、ダシュウッド・ブックスが世界への登竜門になっているのは間違いなさそうだ。 デヴィッド・ストラトル イギリス出身。写真家マリオ・テスティーノのアシスタントなどを経てマグナムへ。2005年「ダシュウッド・ブックス」をオープン。https://www.dashwoodbooks.com BY AKIKO ICHIKAWA