達成・権力・親和・回避のどれかで人の行動は説明できる? マクレランドの欲求理論
「欲求理論」とは、人の行動は「達成欲求」「権力欲求」「親和欲求」「回避欲求」のうちいずれかの動機に基づいているという理論です。米国の心理学者デビッド・マクレランド氏が提唱しました。提唱された1976年当時は「達成」「権力」「親和」の3種類にまとめられていましたが、その後「回避」が追加されました。モチベーションに関わる理論は数多くありますが、マクレランドの欲求理論は仕事に関する動機付けや欲求に焦点を当てているため、企業のモチベーションマネジメントや人事評価などの領域で活用されています。
あなたの部下はどのタイプ? それぞれの特徴に沿ったマネジメントを
どうすれば従業員のモチベーションを上げられるのか。人事担当者やマネジャーなら一度は抱いたことのある、悩みなのではないでしょうか。目標達成率に応じたインセンティブを用意する。感謝を可視化できるようピアボーナスを導入する……。考えを巡らせて施策を実施しても、全員に効果があるわけではありません。モチベーションの源泉は人によって違うからです。 マクレランドの欲求理論によれば、人は「達成欲求」「権力欲求」「親和欲求」「回避欲求」のいずれかに基づいて行動します。そのためマネジャーは、部下がどの欲求が強いタイプであるのかを見極めなければなりません。それぞれの分類には次のような特徴があります。 達成欲求が強い人は、自分の能力を高め、目標を達成することを好みます。自分自身の成長への関心が高く、何事も自分の手でやりたいと願うことが特徴です。中程度のリスクを好み、より良い成績を上げるなどの成功体験を積むことで自己効力感を高めます。結果が数字に表れる仕事に向いているでしょう。 権力欲求が強い人は、他者への影響力を持ち、他者から指示されるのではなく指示する側にいたいという願望を持っています。競争を好み、責任ある立場を任されることを楽しむタイプです。自己成長より他者への影響を行使したいという点で、達成欲求とは異なります。 親和欲求が強い人は、他者との良好な関係を築くことを望みます。他者に好かれたいという願望が強く、人の役に立とうと努力するタイプです。社交性が高い人が多く、対人業務が得意な傾向にあります。 そして回避欲求が強い人は、安定した環境を好み、挑戦やリスクを避けようとすることが特徴です。失敗を回避するために目標を低くしたり、批判されないために意見を表明しなかったりと、受動的な行動を好みます。 昨今の採用市場では、業績への意識が高い「達成欲求」が強い人が求められる傾向にあります。しかし、達成欲求が高いことと能力が高いことは、必ずしも同義ではない点に注意が必要です。また「Aさんは達成欲求」「Bさんは親和欲求」などと完全に分類されるわけではありません。「Aさんは達成欲求が強いが、親和欲求もやや強い」といったように、グラデーションがあることを覚えておくとよいでしょう。 従業員にモチベーション高く働いてもらうためには、メンバーの特性を知り、一人ひとりに合ったコミュニケーションや配置が必要です。