京都の和食通が推す、適価でおいしい「京都らしいカウンター割烹」の新店3。
旨い店がごまんとある街だからこそ知りたい、食ライター&編集者の西村晶子さんが、京都でその店に通う理由。
適価でおいしい大人のための和食。
“地元民が通いたくなる京都らしい割烹です” 近年、和食も新店が増えていますが、おまかせが3万円を超すところが珍しくなく、話題になれば予約も取りづらい。地元民が通いたいと思う新しい店は、ほんとうに限られています。 そうした中で、この3軒は、高くても2万円前後の価格で、京都らしい料理や盛り付け、設えなどが味わえる貴重なカウンター割烹です。 どこも、京都で長く仕事をしてきた料理人が板場に立っているので、新しいけれど、前店からの常連客もいて、雰囲気が落ち着いている。地元の客に混ざって、主人と食材や料理のことをあれこれ会話しながら、ゆっくりと京都の晩ごはんを楽しむことができると思います。
【京都市役所前】二條(にじょう)みなみ
長く名店で培ってきた京都の仕事。その心と技を塗りのカウンターで。 昨春、自店を構えた南建吾さんは、名割烹『祇園川上』で先代のころから25年にわたって、京料理の何たるかを学んできた料理人。季節を表現する八寸は、「走りすぎず、名残すぎず、ほんとうにおいしい時季のもの」を心がける。
お造りは「この時季いちばんおいしいので」と、あえて『川上』の桜鯛の薄造りを継承する。一方で、魚介が入らない野菜だけの炊き合わせなどで、自分の色を添えながら、これまで培ってきた京料理の心と技を、おまかせで遺憾なく発揮している。
「器から食材、盛り付けまで、京都人好みのものがさりげなく出てくる。『川上』譲りのこの街らしい品々がいまの時代、逆に新鮮です」
二條みなみ●京都市中京区榎木町92・12 TEL.075・221・5025 営業時間:17時30分~20時30分LO 日曜休、ほか不定休あり 料理は2万2000円のおまかせ一本のみ。要予約。
【三条京阪】仁王門(におうもん) 無為(むい)
好きな食材を好きな調理法で好きなだけ、が叶う板前割烹。 カウンターに座ると、まずはひと手間施した先付3品がやってくる。その後は、手書きのお品書きから一品料理を選ぶスタイルなのだが、これが圧巻。60品あまりがびっしり。そのうえ相談すれば、「揚げ出しもできますよ」と、品書きにない調理法まで提案してくれるのだから頭が下がる。 でも、店主は、『祇園おかだ』で板前割烹の仕事を長年経験してきた二村英治さん。むしろそうしたやりとりを楽しんでいる様子。調味料使いなど、王道にちょっと利かせたひねりも面白い。