奄美の復帰運動描き最優秀賞 伊集院高演劇部創作劇「朝は明けたり」 県高校演劇祭
第77回鹿児島県高校演劇祭県大会(県高校文化連盟演劇専門部、県高校演劇連盟主催)が7~8日、鹿児島市の宝山ホールであった。県内8校が出場し、最優秀賞に輝いたのは伊集院高校演劇部(上田美和顧問、部員14人)のオリジナル創作劇「朝は明けたり」。戦後の8年間、米軍統治下に置かれた奄美群島で巻き起こった日本復帰運動の様子や、島民の思いを本土に届けようと、奄美大島に渡って奮闘したラジオ局員の姿を描いた。島口(方言)指導などで、出身者ら奄美関係者も協力した。 創作劇は、鹿児島初の民放ラジオ「ラジオ南日本」(現在のМBC南日本放送)が2023年に迎えた開局70周年と奄美群島日本復帰70年の節目に合わせて制作したラジオドラマから着想を得て、上田顧問が台本を仕上げた。 局員2人が復帰の喜びをいち早く伝えるために密航して奄美大島に渡り、島民の声を拾い集めていくストーリー。食料難などに苦しむ中、窮状を訴えるため機関紙の発行を計画する若者たちや、日本復帰の実現に向けて声を上げる人々を生徒たちが演じた。上演時間は1時間。 より忠実に当時の様子を再現するため、セリフの多くを島口にした。学校を数回訪れ生徒たちに直接島口を教えた保宜夫さん(82)=奄美市=は、本番当日も会場で生徒たちの演技を見守った。「復帰運動を経験した小学生当時を思い出した。感激で涙が出た。ぜひ、奄美でも公演してほしい」と話した。 最優秀賞の伊集院高演劇部は、12月20~21日に沖縄県である九州大会への出場権を得た。 部長の宮原咲希さん(2年)は「自分たちだけではこのような賞は頂けなかった。奄美の人たちの指導があったおかげ。結果で恩返しができた」と喜び「奄美の人々が復帰までにどれだけ苦しい思いをしたか、同じ鹿児島でも県本土では知らない人が多い。二度と悲劇を繰り返してはいけないと、今を生きる私たちが伝えていきたい」と力を込めた。 上田顧問は「奄美の復帰運動を調べれば調べるほど、島民が苦労しながらも屈せずに戦い続けたことが分かった。生徒たちには多くの人たちへの感謝の気持ちを忘れず、九州大会でもそれぞれの役を演じてほしい」と語った。
奄美の南海日日新聞