浦和レッズ“声出し応援”消える…J警告と管理強化の効果か
臨時実行委員会が開催される前の時点で、浦和は公式ホームページ上で「ガンバ大阪戦における事象について」と題した声明を掲載。ガンバ戦で違反行為があったと認めた上で謝罪し、再発防止策を事前周知と試合当日とに分けて発表していた。 さらにJリーグからの通達を受けて、浦和の立花洋一社長は京都戦前に「われわれの管理能力が問われている。強い覚悟を持って対応する」と明言。警備上の観点で人数そのものは非公表ながら、違反行為を監視するスタッフを通常の2.5倍に増やした。 FC東京戦でも同様の監視態勢が取られ、試合前には公式ホームページやSNS上で、試合中にはオーロラビジョン上で注意喚起を含めた啓発情報を何度も発信した。 果たして、京都戦に続いてFC東京戦でも、応援旗が振られるスタンドからは手拍子が鳴り響き、浦和のいいプレーに対しては万雷の拍手が降り注ぐ光景が生まれた。飲水タイムなど、プレーが止まったときには再開されるまで静寂に支配されていた。 2万6293人のファン・サポーターが見つめた一戦は、ピッチ上の選手たちの声だけが響く時間帯をも生み出した。そのなかでFC東京をシャットアウトした浦和の守護神、キャプテンの西川周作(36)はJ1リーグ戦における完封数を「170」に伸ばし、鹿島アントラーズで活躍した曽ケ端準氏を抜いて歴代1位に躍り出た。 「僕の背中からはいつもサポーターが見ていてくれる。感謝の気持ちでいっぱいです」 浦和のファン・サポーターへ抱き続ける思いを明かした西川は、京都戦に続いて、これまでとは異なる光景を生み出してくれたと神妙な表情を浮かべている。 「数試合前に起こしたアクションに対して、Jリーグから言われたことを素直に受け入れて、しっかりとした姿勢で僕たちを後押ししてくれた。特に前節はそれを強く感じたし、だからこそ自分たちが勝たなければいけなかったとあらためて思いました」 京都戦は試合開始早々に先制しながらも、後半9分と11分に連続失点。それでも、さらに強く響いた手拍子に背中を押された浦和は、先制点を決めていたMFダヴィド・モーベルグ(28)が14分に同点ゴールを決めて引き分けに持ち込んでいた。 だからこそ、FC東京から手にした快勝が、個人的な記録よりもはるかに嬉しかった。ファン・サポーターに捧げたいとばかりに、西川はこんな言葉を紡いでいる。 「毎試合のように思っていますけど、レッズのサポーターの方々は本当に心強いし、これからも一緒に闘っていきたい。そして、声が出せるようになったときに、僕はまたあの声を聞けることを本当に楽しみにしている。いまは我慢の時間が続きますけど、あと少し僕たちを手拍子で後押ししていただけたらありがたいです」 Jリーグは6月から、対象となる試合とスタジアム内のエリアを限定し、試合の運営検証を繰り返しながら、声出し応援の段階的な緩和を進めている。コロナ禍前の光景を取り戻すにはサッカー界の外、つまり政府や各自治体、地元住民の理解が欠かせないなかで、観客動員数でナンバーワンを誇る浦和もようやく自浄能力を示しはじめた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)