焼肉店の倒産が止まらない…チェーン店との競争が激化しても"元気な個人店"が提供している「安さ以外」の価値
■「価格以外の軸」で顧客の支持を集めることが重要 さらに、サービスの柔軟性を高める取り組みとして、「ビジネスモデルの多様化」も注目されています。特にコロナ禍以降、テイクアウトやデリバリーサービスを導入する焼肉店も増えており、これにより昼間の需要や家庭向けの需要を取り込むことができています。また、大手だけでなく個人店でも月額制の「サブスクリプションサービス」を導入する店舗も見られ、定期的に特典を提供することで安定的な来客を促す取り組みが進んでいます。こうした柔軟な営業形態を取り入れることで、経済環境が変動しやすい現代においても、一定の収益を確保できる工夫を施しているのです。 個人店が生き残るためには、顧客との信頼関係を築き、店舗への愛着を高める努力が不可欠です。チェーン店の持つ安定性にはない「特別な価値」を提供し、消費者にとって唯一無二の存在となることが重要です。地元の特色を活かし、デジタルマーケティングを通じて積極的に店舗の魅力を伝えること、そして競争の激しい市場の中でも、価格以外の軸で顧客に支持される戦略をとることが、個人経営の焼肉店が今後も生き残っていくための鍵となるでしょう。 ■個人経営の焼肉店の苦境はしばらく続く 繰り返しになりますが、焼肉業界が抱える経営課題は、円安や物価高騰による仕入れコストの増加、人件費の上昇、光熱費の高騰と多岐にわたります。特に個人経営の焼肉店にとって、これらのコスト増に対応することは容易ではありません。しかし、こうした厳しい経済環境の中でも、持続的な経営を実現するための工夫は可能です。今後、個人経営の焼肉店が生き残り、さらなる発展を遂げるためには、前述のような独自性のある商品の開発やデジタル化を活用した効率化が重要な戦略となるでしょう。 最後に、個人経営の焼肉店が生き残るための提言として、「差別化戦略」にも注力することが挙げられます。大手チェーンが資本力を活かして価格競争を仕掛ける中で、個人店が同じ土俵で競争するのは現実的ではありません。そのため、価格に頼らない付加価値をいかに提供できるかが重要です。具体的には、希少部位の提供や、地元産の肉や野菜を使ったメニューなど、他店とは異なる「ここでしか味わえない」体験を提供することで、顧客にとっての魅力を高めることができます。 このように、焼肉業界が直面する厳しい経営環境においても、個人経営の焼肉店には生き残るための工夫が残されています。とはいえ、経済状況や人手不足の現状を踏まえると、個人経営の焼肉店の苦境はしばらく続くと考えるのが自然なのかもしれません。 ---------- 横須賀 輝尚(よこすか・てるひさ) 特定行政書士 1979年、埼玉県行田市生まれ。パワーコンテンツジャパン株式会社代表取締役。特定行政書士。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設し、独立。2007年に士業向けの経営スクール「経営天才塾」(現:LEGALBACKS)をスタートさせ、創設以来、全国のべ1700人以上が参加。士業向けスクールとして事実上日本一の規模となる。著書に『小さな会社の逆転戦略 最強ブログ営業術』(技術評論社)、『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)共著で『合同会社(LLC)設立&運営 完全ガイド はじめてでも最短距離で登記・変更ができる!』(技術評論社)などがある。 ----------
特定行政書士 横須賀 輝尚