メルセデス・ベンツ、エンジンとEVに投資継続 「EQ」サブブランドは廃止へ
エンジンとEV、それぞれ専用プラットフォームを用意
ドイツのメルセデス・ベンツは、内燃エンジン車と電気自動車(EV)それぞれ個別のプラットフォームへの投資と開発を、需要がある限り継続する意向だ。最高経営責任者(CEO)のオラ・ケレニウス氏が認めた。 【写真】「ゲレンデ」がついにEV化! オフロード走行はお手のもの【メルセデス・ベンツG 580を写真で見る】 (29枚) ケレニウスCEOはAUTOCARの取材に対し、装備レベル、室内の広さ、技術、性能のいずれにおいても「妥協のない」モデルを提供しなければならないと述べた。そして、それを実現する唯一の方法は、専用のプラットフォームを用意することであるとした。 その一例として挙げられたのが2028年後半に発売予定の次期Sクラスだ。エンジン車ベースのEV、またはその逆のパターンで作る場合、適切な性能レベルと室内空間を確保することは不可能だという。 「その時点で市場が100%EVになるという確信がないのであれば、両方の選択肢を用意しなければなりません。妥協することなく、EVと高度なハイブリッド車を提供する必要があります」 「そのシナリオで実行可能な唯一の解決策は、2つのプラットフォームを持つことです」 「EVのパッケージングの利点は明白です。内燃エンジン車をEVに変えると、スペースを犠牲にすることになります」 「それに、当社は100年以上にわたって内燃エンジン車の完成に努めてきました」 「Sクラスのような高級セダンは、世界で最も優れたパッケージングを誇ります。後部座席の乗り心地については、ベンチマークそのものです。お客様がその後退を受け入れるとは思えません」 「この方程式ではお客様が第一であり、お客様こそが真の勝者です。これからの10年はメルセデスのお客様にとって最高の時代となるでしょう」 ケレニウスCEOは「2つのバージョンに投資することは、投資に負担をかける」と認めながらも、「賢明な方法で行えば、追加投資を管理可能なレベルに抑えることができる。それを目指している」と述べた。 そのために、パワートレイン、パッケージング、およびそれを支える電子アーキテクチャーに関連しないものは、EVとエンジン車の間で可能な限り共通化される。 実際、物理的な従来のハードウェアはもはや自動車における最大の投資対象ではなく、代わりに電子アーキテクチャーとソフトウェアが焦点となっている。 ケレニウスCEOは、メルセデス・ベンツのEVとエンジン車のモデルラインの統合は「すでに始まっている」と述べた。サブブランドのEQは段階的に廃止され、EVのGクラスは「EQG」ではなく「G 580」と呼ばれている。 これはEVへのコミットメントを後退させるものではなく、むしろその逆だという。メルセデス・ベンツの完全電動化への取り組みは、常に「市場の状況が許す限り」という条件付きのものである。そのような状況はまだ整っておらず、当面は整わないだろう。 ケレニウスCEOは、EVの普及の遅さに驚いていることを認めた。5年前、メルセデス・ベンツのEV展開が始まった当初の予測では、今頃は販売台数の4分の1程度がEVになっているはずだったが、実際はその半分にも満たない。 メルセデス・ベンツは、すべての内燃エンジン車の次世代モデルに投資し、ハイブリッド化して欧州の排出ガス規制ユーロ7に対応している。 EVへの投資と併せて、同社は「非常に強力なポジションにあり、おそらく既存の自動車メーカーの中で最も強いポジションの1つ」にあるため、市場がどのように進化しても対応できる、とケレニウスCEOは主張した。 「2030年までにEVが完全な主流にならないのであれば、市場の大部分から撤退するのは経済的に理にかないません」 「内燃エンジン車とEVが50:50になったとしても、事業の半分を放棄することはないはずです。であれば、当初考えていた以上に内燃エンジン車の戦略を拡大する必要があります」
マーク・ティショー(執筆) 林汰久也(翻訳)