900年欠かさず行われてきた春日大社「旬祭」神道の基本を凝縮した祭典を体験
その後、2名の御巫によって社伝神楽が中門下で奉納されます。春日大社では巫女さんは御巫(みかんこ)と称され、紅白の襟を8枚交互に重ねた重厚な衣をまとい、額には春日大社のシンボルともいえる藤の花をあしらった簪を飾っています。扇を使った舞と、鈴を使った舞の2曲が神様に奉納されます。 春日大社の旬祭では献饌などで奏でられる雅楽も、奉納の神楽でも、毎回多くの曲が演奏されます。旬祭だけで様々な曲を聴くことができるので、雅楽好きな人には興味深いかもしれません。雅楽を演奏している伶人は、全て春日大社の職員です。 この後、「玉串奉奠」が行われ、先にお供えした神饌をお下げする「撤饌の儀」があり、神職一同が退下して旬祭は終了します。 神職は引き続き、御本殿から少し離れたところに鎮座する若宮で同様に旬祭を斎行します。
神道講話と神米粥
一般参列者のうち希望者は、11時半から「感謝・共生の館」で開催される神道講話「ためになる神職のお話」を聴講することができます。この日は、「お祓いについて」の内容でした。お祓いとは何か、祓うべき罪穢れとは何か、祭典にあたっての禊とは何か、どんなことをするのかといったことを事細かに教えて頂きました。中には春日大社独特の伝統や風習などについてのお話もあり、大変勉強になりました。 1時間ほどで講話が終わると、ちょうどお昼時ということで、朝の受付時に希望していた人のみですが直会の時間となります。ここでふるまわれるのは「神米粥」といって、神様にお供えされたお米を炊いたお粥のお膳です。 塗りの椀にたっぷりと盛られた温かいお粥には、月ごとに異なる具が入っています。筆者が参列した9月の旬祭の神米粥には小芋と枝豆が入っていて、香りづけに削った柚子が散らされていました。この他、3種類のお惣菜とお香の物、お茶がつきます。 直会の前にはみんなでそろって食前感謝の和歌を唱えてからお粥を頂きます。また、食後には全員揃って食後感謝の和歌を唱えます。 食前感謝の歌「たなつもの 百の木草も 天照す 日の大神の めぐみえてこそ」 食後感謝の歌「朝よひに 物くふごとに 豊受の 神のめぐみを 思へ世の人」 いずれも『玉鉾百首』の中で江戸時代の国学者・本居宣長が詠んだ歌です。 旬祭参列体験は以上で、午後1時頃に解散となります。
半日間みっちり、古来の伝統を守る古社での格式高い祭典に参列し、神道講話を聴いて、神様のお米のおすそ分けに預かるという貴重な体験でした。日々、生かされていることに感謝し、神様にお供え物をして、後にそれをお分かち頂くという神道の根本を凝縮体験できる春日大社の旬祭。是非一度、参列してみてはいかがでしょうか。 (文:平松温子)