900年欠かさず行われてきた春日大社「旬祭」神道の基本を凝縮した祭典を体験
古社の厳かな祭典
お祭りが始まることを知らせる報鼓が鳴ると、宮司以下神職、巫女が十数名、列をなして中門を入り、東御廊(御本殿に向かって右)に昇殿します。お祭りは、以下のような次第で行われます。 まず、参列者も含め祭典に先立ち再拝拍手した後、神様へのお供え物や玉串、神職のお祓いに続き、参列者も頭を垂れてお祓いを受けます。 続いて、神様へのお食事である「神饌」をお供えする「献饌の儀」が行われます。 北御廊に設けられた神様のお食事を整えるための部屋「神饌所」から、神職数人が一列になって順次、神饌を目線に掲げて御本殿まで手渡しで送っていきます。
神饌は日の丸盆に盛られて渡されていきます。日の丸盆は旬祭の時のみに使用される黒塗りで上面のみ朱塗りの円盆で、先の式年造替で新調されたものです。神饌は、米、鏡餅、「ぶと」と呼ばれる米粉を蒸して揚げた唐菓子、酒、塩、野菜、海のもの(この日は昆布、するめ)、果物。春日大社には御本殿が4殿あり、これらの神饌がそれぞれ3枚の盆に分けて運ばれます。また、境内にある摂社・末社への神饌も運ばれます。 各本殿に運ばれた神饌は旬祭の時のみ使用される八足案の下に日の丸盆を仮置きし、改めて一品ずつ丁重に八足案にお供えされます。八足案は長方形の面に「鷺足」と呼ばれる八本の脚がつき、黒漆塗りに花菱文様の約1000枚の螺鈿や金色の金具が施された優美な台です。これも、先の式年造替で新調されたばかりの真新しいものです。日の丸盆や八足案など、旬祭の時だけ用いられる豪華な祭器具があることからも、旬祭がいかに大切な祭りであるかが伺えます。
全員で大祓詞奏上
献饌に続き、御幣をお供えする「奉幣の儀」。御幣とは両手で捧げ持つ4本の木串の先に長方形の和紙を挿した上に紙垂と呼ばれるギザギザに折りたたんだ和紙を垂らしたもので、春日大社では「トアタリ」との別名があります。大きな御幣は各御本殿正面の階段に1本ずつ立てかけられますが、昔は御本殿の御扉に当たる角度で立てかけられたため、この名があるのではないかとの説があります。 神饌と御幣のお供えが終わると、宮司が第一殿の前で祝詞を奏上します。参列者は祝詞奏上の間、頭を垂れてともに祈ります。 次いで、参列者も一緒に全員で「大祓詞」を奏上します。大祓詞は罪穢れを祓う特別な詞で、「大」は国家や公を意味します。春日大社の大祓詞は一般神社で奏上されるものと少し異なる古式のものですので、事前に頂いた大祓詞を見ながら声を一つにして奏上します。