明日開幕。プロ19年目36歳の大久保嘉人、J通算200ゴールへの挑戦
「まったくなかったですね。だって、プレーするのはオレなので。みんながオレの人生を代わりにやってくれるわけじゃないので。この年でも呼んでくれるのは、本当に稀なことですから。オレのサッカー人生は、ほぼ批判ばかりだったから。いつでも覚悟はできているし、批判を覆させた先に待つ喜びが普通の人よりもある。だから、何の後悔もなかった」 不敵な笑みを浮かべながら、大久保は強気なコメントを介して、海外を含めて通算9度目となる移籍を振り返った。しかし、決断に至るまでの当時の胸中には180度異なる思いが渦巻いていたと、フロンターレの公式ホームページ上でファンやサポーターへ明かしている。 「悩み続ける日々の中で、『引退』の文字が浮かんできていたことも事実です。(中略)年を重ねるごとに、時間の感覚というか、1日1日の重みが変わってきたことを感じています。36歳になったいま、前に進むスピードを上げていかないと、その変化についていけない。(中略)置かれている現状では、そのスピードを上げることができないと判断しました」(原文のまま) しかし、ジュビロで待っていたのは、ヴィッセル神戸時代の2012シーズン以来となるJ1残留争いの日々だった。司令塔の中村俊輔、サイドアタッカーのアダイウトン、ボランチのムサエフが故障で長期離脱を強いられていたチームは、攻守のバランスが著しく狂っていた。 昨シーズンを振り返れば、6勝5分け6敗の9位だった前半戦から、大久保が加入した後半戦は4勝6分け7敗の16位へ後退。新設されたJ1参入プレーオフ決定戦へ回り、J2の6位から勝ち上がってきた東京ヴェルディを下して何とか残留を果たした。 ただ、新たな仲間たちの顔ぶれを見たとき、本来の力が反映されていないと大久保は感じていた。前線では森保ジャパンにも名前を連ねた川又堅碁が11ゴールをあげて奮闘し、中盤にはザックジャパンを経験した山田大記、アギーレジャパンでプレーした田口泰士がいる。 「ほんのちょっとだけ歯車が狂っていたというか。いま現在のJ1はレベルがあまり変わらないので、どのチームにも起こりうることが、去年はたまたまジュビロだったと思っている」 こう語る大久保も、お互いを知る時間が限られたなかで3ゴールにとどまった。それでも全員がもがき、苦しんだ末に勝ち取った残留が今シーズンにつながると力を込める。 「ヴェルディに勝ったことで、ヤマハスタジアムがひとつになったと感じられた。素晴らしい経験になったし、何よりも去年の苦しみをみんなが忘れていないので」