明日開幕。プロ19年目36歳の大久保嘉人、J通算200ゴールへの挑戦
後ろを振り返っても、もはや誰の姿も見えない。前人未到の大台到達へ、自分だけが挑戦権をもっている状況を思い浮かべるたびにモチベーションが高まってくる。J1の歴代最多ゴールスコアラー、大久保嘉人(ジュビロ磐田)が間もなく幕を開ける2019シーズンを心待ちにしている。 「日本で誰も達成していないですからね。自分が一番先に記録を作れる、歴史に名前を刻みたいとずっと言ってきたので」 残り「16」に迫っているJ1通算200ゴールへ照準を定めながら、36歳のベテランは幾度となくこんな言葉を残してきた。 歴代2位の161ゴールをあげているFW佐藤寿人は今シーズンからジェフユナイテッド千葉へ、同4位の154ゴールのFW前田遼一もFC岐阜へ、ともにJ2へ移籍した。 157ゴールで同3位のFW中山雅史は、2015年に現役復帰したJ3のアスルクラロ沼津で一度もベンチに入っていない。J1勢で続くのは、同7位につけるFW興梠慎三(浦和レッズ)の135ゴール。大久保に追いつき、追い越すのは容易ではない大差がついている。 もっとも、大久保の得点ペースには急ブレーキがかかっている。4年間で82ゴールを量産し、史上初の3年連続得点王を獲得した川崎フロンターレから、FC東京へ新天地を求めた2017シーズンは8ゴールにとどまった。 「ずっと同じところにおるのは、なんだか安パイみたいで面白くないからね」 相性抜群のフロンターレを去る決断を後押ししたチャレンジャー魂は、時間の経過とともに「やっぱりフロンターレのサッカーが好きだ」という憧憬の念へ変化。批判されるのを覚悟のうえで、わずか1年で出戻る決断をくだした。 しかし、慣れ親しんでいたはずの古巣で、なかなか先発の機会を得られない。途中出場が続き、ゴール数も2にとどまっている状態で、ワールドカップ・ロシア大会による中断期間へ突入。そこへ届いたのが、ジュビロを率いる名波浩監督からの熱いラブコールだった。 「得点力不足なので助けてほしい、と。すぐに移籍を決めました」 フロンターレは違約金をFC東京へ支払う形で、復帰を熱望していた大久保の思いを汲んでいた。いわば恩を仇で返す形で、わずか半年プレーしただけでジュビロへ移籍することへの躊躇や、あるいは後ろめたさは抱かなかったのだろうか。