ギャップ萌え男子の魅力が詰め込まれた至極のコメディ漫画『クールなふたりは見かけによらない』【書評】
いつもクールで冷たい印象のある人に、意外な一面があることを知ったとき、思わずキュンとしてしまう人は少なくないだろう。『クールなふたりは見かけによらない』(道雪葵/祥伝社)は、“できる男”オーラ満載なのに実はポンコツな一面を持つ男性二人の日常を描いた、至極のギャップ萌えコメディだ。 【漫画】本編を読む
主人公・多田野は、生まれ持った凛々しい見た目とポンコツな内面とのギャップに苦しむサラリーマン。学生時代は推薦された学級委員の役目を全くこなせず、受験では会場を間違え、アルバイト先ではレジの誤操作をくり返すなど、周囲の期待を裏切る失敗を数多く経験しながら生きてきた。 その特性は、会社員となった今も全く変わらない。今日も今日とて数々のミスやメールの誤字脱字に大目玉を食らい、挙句には「氷の帝王」と呼ばれる氷鷹社長に正面からコーヒーをぶっかけてしまう始末。 すっかり肩を落として帰路につく多田野だったが、帰りがけに寄ったスーパーで思いがけず氷鷹社長と行き会う。そこで目にしたのは、日用品の買い物や小さな家事の一つも満足にできない社長の姿。なんと社長もまた、ダメダメな一面を隠し持った“隠れポンコツ男”だったのだ。 注目すべきは、主人公・多田野の実直な人柄と憎めないキャラクター。誰にだって、生まれつき苦手なことや不向きなことの一つや二つはあるものだ。そのとき、大事なのはできない自分を責め続けることではなく、多田野のように苦手分野を補う方法を考えたり、得意分野で高みを目指そうと努力したりする真摯な姿勢なのである。 失敗続きでも焦らず腐らず、周囲に素直に教えを乞う多田野の姿に、氷鷹社長も自然と感化されていく。苦手な料理の特訓のため子どもに交じってクッキング教室に参加し、しまいには多田野に直接、家事の指南を仰ぐ氷鷹社長の姿には微笑ましくも頭が下がる。仕事ができない会社員と家事ができない社長のバディ感にも注目したい。 読後はありのままの自分を認めて受け入れる大切さを実感できること間違いなし。ギャップのある男性に弱い女性はもちろん、外見と内面の印象の乖離に悩んでいる人にもぜひ読んでほしい作品だ。 文=ネゴト / 糸野旬