東大生を嘲笑すれば、権威を示せるとでも思っているのか? 東大の学費値上げ闘争のその後
さんきゅう倉田です。38歳で東京大学に合格し、いま2年生です。2年のSセメスター(前学期)は在学する4年間で最も暇だと聞いています。友人たちはインターンやアルバイトに精を出し、かくいうぼくは英語とフランス語の勉強に勤しんでいます。 【表】東京大学の合格者のうち、上位の出身校〈中高一貫校〉は? さて、大学内では6月に一悶着ありました。その少し前に、突然メディアによって東京大学が10万円ほどの学費の値上げを検討していると発表され、寝耳に水だった学生たちは、文化祭でデモを行い、Xで連帯し、大学側に文書を送りましたが、全く相手にされません。 大学側が学生や学費を負担している保護者への説明を実施せず、メディアにリークしたことには納得できません(国税庁が税務調査の結果をリークするように、東大が自主的にリークした可能性もあるし、一部の職員が独断で告発した可能性もある)。さらに、その後の学生を無視するような態度もあんまりだと感じます。 先日、「総長対話」なるイベントが実施され、初めて学生が大学側に質問をする機会が与えられました。この模様は時代錯誤社などの団体によって配信され(配信を予告していた一部の団体は大学から警告されていました)、多くの学生や院生がその模様を見ることができました。
対話とは名ばかりだとされた「総長対話」
発言した学生や院生はとてもするどい意見を言っていました。多くの聴衆が見守る中で、毅然とした態度でしっかりと実のある発言ができたことに賛辞の言葉を送りたい。しかし、学生の発言に対し、大学側の代表が笑う場面がありました。 学生は特段面白いことを言ったわけではありません。発言に対して嘲笑することで、権威の構造を示そうとしたように感じました。 上司や権力者が何か言ったときに嘲ることなど絶対にありえないはずです。学費の値上げについて議論するという、教育の公平性と地続きのテーマを扱う中で学生の発言に対して笑うのは傲慢で軽率な態度です。大学側の代表がすべてそのような考え方ではないと思いますが、残念でした。値上げに対して大学の代表がどのような感覚を持っているのか垣間見た気がします。 この日、東大本郷キャンパスの安田講堂前でデモが行われていました。 一部の学生が「インターナショナル」(*)を歌ったことなどがX上で話題になり、インターナショナルとはどのような楽曲なのか調べ学びを得た学生もいたようです(ぼくも知らなかったのですぐに調べました)。 (編集部注) *1871年に革命歌としてフランスでつくられ、1944年までソ連の国歌だった「インターナショナル」。1969年に東大を占拠した全共闘の学生たちとの攻防は機動隊が出動する事態に発展。授業料の値上げ反対や70年安保改定反対など、東大紛争が拡大して全国の大学に「学生運動」が広がるきっかけになりました。日本では労働歌の象徴として当時の闘争で歌われた歌として知られています。 さらに、学生数名が安田講堂に侵入しようとして警備員に全治1週間の怪我を負わせ、大学が警察に通報し、警杖や盾を持った30名の警官が導入されました。 大学側は怪我の内容などを公表していませんでしたが、毎日新聞の取材によると、「けがと言えるのか微妙で、少なくとも流血しているとか傷跡があるという状況では無い」とのことで、警察を呼んだことは大学の自治の放棄であると批判されています。 「怪我をした警備員などいないのではないか」といった憶測も流れ、「本当に怪我をしているのなら、労災申請をするだろうから開示請求をすれば分かる」などといった意見もみられました。