韓国“アジュンマ”映画がアツい! キム・ヘス、ラ・ミランらの“放っておけない”強さ
『市民捜査官』『ガール・コップス』ラ・ミラン
『市民捜査官ドッキ』のラ・ミランは2019年に映画『ガール・コップス』で初主演を務めた。それまではバイプレイヤーであったラ・ミランが主演をしたのは、過去に出演した映画『ソウォン/願い』の演技を観た制作会社の代表の一声だったという。 『市民捜査官ドッキ』にも、「だまされた私がバカなの? 違う、必死な人を食い物にしたあんたが悪いの」というセリフがあるが、ラ・ミランのこうした自問自答のセリフには心にしみるものがある。 『ガール・コップス』は、実際にあった「n番部屋事件」を彷彿させるネットの性加害問題がテーマのクライム・アクションだ。その中で、撮影された動画を拡散され、亡くなってしまった女子大学生のために、必死で事件を追うミヨン(ラ・ミラン)が、自問自答するセリフもよい。 「なんでここまですると思う? 被害者が気の毒で? 同じ女として悔しいから?」「女たちが『自分の過ちだ』『自業自得だ』と自分を責めるしかない状況に腹が立つからよ。紛れもない被害者なのに……」というものなのだが、こうした「おばさん」のまっとうな正義感と怒りを今、韓国でもっとも体現できるのがラ・ミランなのではないだろうか。
『82年生まれ、キム・ジヨン』ヨム・ヘラン
イ・ジョンウンやラ・ミランは、長年バイプレイヤーをしていて、近年は主演もするようになったが、韓国には彼女たちに続きそうな「おばさん」バイプレイヤーがたくさん存在している。中でも注目は、『市民捜査官ドッキ』にも出演のヨム・ヘランではないだろうか。 彼女の出演作で忘れられないのは、『82年生まれ、キム・ジヨン』のワンシーン。ジヨンが高校生の頃、バスに乗っていて同年代の男の子につきまとわれていたとき、それに気づき、忘れ物があったかのようにふるまい、バスを降りて彼女を助けるおばさんを演じているのがヨム・ヘランだ。原作でも印象に残ったこのシーンだが、ヨム・ヘランが演じたことで、より印象に残るものとなった。 筆者が「困った人を放っておけない」韓国のキャラクターに注目しはじめたのは、このヨム・ヘランのシーンがきっかけとなったくらいである。 こうした「アジュンマ」のシーンを観ていると、何かが起こったときに、すぐに連帯して動くことのできる韓国の人々のベースには、こうした「放っておけない」ところにあるのではないかとも思えるくらいである。 韓国でもときおり、世知辛く、人助けもできないほどに困窮している様子が描かれる映画も増えてきて、それはそれでリアリティを感じるが、やっぱり、おせっかいなアジュンマが困った人を放っておけない作品が今後も作られることを期待してやまない。
西森路代