レンジローバー・スポーツ x ポルシェ・カイエン 比較試乗(2) 高級感と多用途性か 技術的な達成度か
本性が顕になるスポーツ・モード
ポルシェ・カイエン・ターボ E-ハイブリッドが積むハイブリッド・パワートレインは、カタログ値の通り、馬力とトルクでランドローバー・レンジローバー・スポーツ SV エディションワンより優位。オプションの、GTパッケージが組まれてもいる。 【写真】ブランド成長の「金の卵」 レンジローバー・スポーツ ポルシェ・カイエン 競合のSUVも (165枚) 欧州市場ではCO2の排出量を理由に、カイエン・ターボGTという禁断の果実的な仕様が提供されていない。それを補う軽量化パッケージがこれで、ターボGT由来のアイテムがふんだんに追加される。 カーボンファイバー製ルーフパネルの他、リアディフューザー、チタン製スポーツエグゾースト、ネガティブ・キャンバーを強めるフロントハブ、軽い補機バッテリーなどが組まれ、100kgの重量削減に貢献。車重は、2495kgに抑えられている。 オプションがなければ、レンジローバー・スポーツの方が明らかに軽量なのだが、今回の2台はほぼ同じ。車重は10kg軽いだけに過ぎない。動力性能で優れるカイエン・ターボの方が、舗装路での動的な戦いを有利に進めそうなことは、想像に難くない。 プラグイン・ハイブリッドの中には、乗り手を混乱させるように協調性の低いシステムも存在するが、カイエンのそれは違う。電気だけで静かに発進する一方、ステアリングホイールのセレクターでスポーツ・モードを選ぶと、研ぎ澄まされた本性が顕になる。
専用ボタンで召喚するSVモード
チタン製マフラーから、聴き応えたっぷりな4.0L V8ユニットの排気音が放たれ、トランスミッションはエンジンの回転数と見事にシンクロ。エアスプリングは、ボディをフラットに保つ。 ステアリングホイールは、不要な路面の質感を排除しつつ、指先へポジティブな感触を伝え始める。速く運転すればするほど、深遠な才能が発揮される印象。大きく重いクルマでありながら、走りは極めてダイナミックだ。 レンジローバー・スポーツには、感心するほど多様なドライブモードが準備され、基本的にはダッシュボード上のタッチモニターから選べる。ただし、SVモードは特別。ステアリングホイールに与えられた、専用のボタンで召喚できる。 これを押すと、これまで黒子に徹してきたBMW由来の4.4L V8ツインターボエンジンはボリュームアップ。ややデジタル的な人工音ではあるものの、不快さは微塵もない。 洗練性や快適性が重視されつつ、動的な能力の幅は間違いなく広い。目的地までゆったり心地よく移動できるのと同時に、スポーティな操縦性も叶えている。ただし、高次元でのグリップ力や安定性、躍動感で、カイエン・ターボに並ぶとはいえないだろう。 実用性で有利な四角いボディは、カーブが連続するワインディングでは足かせになる。悪路での走破性に必要なサスペンション・ストロークも、アスファルトではボディの落ち着きを保つうえでハンデ。最も低く引き締めても、完全には挽回できない。