数々のスキャンダルもみ消したジャニーズの剛腕、故メリー喜多川はいかにしてメディアを支配したのか?
■ 「ヒガシはうってつけのポジションだった」 平本:ヒガシは「この先を担えるのは自分しかいない」と考えたのでしょう。おそらく、それは正しい。被害者たちと対面して、直接謝罪するという職責を担うに適した人物だと思う。ジャニーズ在籍組の最年長の長兄で、名前も顔もよく知られていますから、そういうポジションにはうってつけだと思う。 雇われ社長を外部から連れてきたり、事務所の幹部だけど名前も顔も知られていない人物があの役を担って職責上謝罪したりしても、謝罪を受けるほうは実感を得ることはできないでしょう。 彼が矢面に立って真摯に謝罪することで、被害者や一般の方からの理解が得られる部分はあると思います。一方で、期間限定の実権のない社長なので、自分の権限で何かを決めたり、情報を発信したりすることができる立場でもない。難しい立場に立っていると思います。 本当は謝罪すべきなのはジュリーさんです。彼女は、ジャニーズの親族であり、会社の資産も、一族の資産も、現在の会社の売り上げも引き継いだ人物です。 でも、ジャニー喜多川性加害の特別調査チームが、同族経営を批判して、彼女が代表でいる限り、ジャニーズの体質は変わらない恐れがあると指摘した。その結果、世間からも「ジュリーを下ろせ」という批判があったので、彼女は従った。 ところが、下りたら今度は「逃げるのか」という声もある。それじゃ彼女もどうしたらいいのか分からないよね。 「ジャニーズを潰せ」という声もありますが、ジャニーズが潰れたら誰が被害者を救済するのか。世間は感情的ですが、必ずしも本当にいい解決策を考えているわけではないと思います。 でも、こういう発言をすると「ジャニーズを擁護するのか」と批判する人もいるんだよね。好き勝手なことを言う外野が多いよね。
■ 40年ぶりの再会でヒガシと話したこと ──それまでのタレントのキャリアを一旦脇に置いて社長になることは、東山氏にとっては辛い判断だったように思います。 平本:必ずしもそんなことはないと思います。一介のジュニアから始まった彼のキャリアで最終的に社長までいけたのだから。おそらく相当な報酬だって受け取っているでしょう。 そして、性被害者という目で世間から見られるのではなく、加害者の上に立って代わりに謝罪することで、この問題において、いい意味で自分の立場と印象を作ることもできる。会社の代わりに矢面に立って謝罪をすれば同情だって得られる。数年後に、タレント業に復帰したっておかしくない。 昨年5月に、マッチ(近藤真彦)が「知ってた、知らなかったじゃなくて、もう知ってるでしょ......」と発言をした時に、今後どこまで告発が広がっていくのかとジャニーズ関係者は戦々恐々として、それまでとはレベルの違う本当の対応をしないわけにはいかないと思った。そういうことを全部考慮して、ヒガシはあのポストについたのだと思います。 ──ジュリー氏や東山氏と久しぶりに再会した時、どんなやり取りがあったのですか? 平本:ヒガシとは同い年で、一緒にジュニアをやっていたから、40年ぶりの再会でした。「久しぶり」という一言で始まり、いろんな話をしましたよ。 ジュリーさんには「ご無沙汰です」「この長い人生の中で一番会いたかった人です」と伝えました。そうしたら「そうですか、時間がかかってすみません」とおっしゃっていた。「今回は、いろいろ認めて下さってありがとうございます」と言いながら、お互い何度も会釈しました。 こちらの言い分もよく理解してくれたし、否定し合うようなこともありませんでした。それ以降も、対話のできる関係を続けてきました。「よく会ってくれたな」という気持ちはあるし、お互いに「まさかこんな形で再開するとは」という気持ちがあります。 僕は35年前からジャニーズの性加害に関して発言・発信してきたし、その関係でヒガシやジュリーさんに関して厳しいことも言ったり書いたりしてきた。そういう相手と再会するのは、先方も複雑な気持ちがあったと思うよ。だから、再会した時に「本で、いろんな余計なこと書いて、すみませんでした」と謝りましたよ(笑)。 確かにいろんなことを書いてきたけれど、あの手この手を使って35年間、ジャニーズの性加害問題について語る努力を続けてきました。他に語る人もいなくなったから、灯を絶やしてはいけないと思ってやってきた。 この間、いろいろな誹謗中傷を受け続けましたよ。「殺す」「沈める」なんて何十回も言われて、一時はボディガードまで雇いました。でも、そういうことがBBCの報道につながって。BBCが来た時も、取材先の紹介から情報提供、自分の証言・出演まで、かなりお手伝いしました。とにかく35年間、嫌われながらも頑張ってきました。