タクフェス『夕-ゆう-』主演・矢島舞美インタビュー 稽古場は「新しい発見がたくさんある」
脚本家、俳優としてテレビドラマ、映画などで活躍を続ける宅間孝行によるエンターテイメントプロジェクト「タクフェス」。 第12弾として上演されるのがタクフェスでも人気の作品『夕-ゆう-』だ。 舞台は1980年代の長崎の夏。 海の家兼民宿「あいかわ」に住むヤンキー兄弟の次男坊で古屋敬多演じる元弥に淡い恋心を寄せるのが、隣に住む幼なじみの夕を演じるのが矢島舞美だ。 恋愛に友情に、とこれぞ青春! を描いた作品だ。 今回、「タクフェス」初出演となる矢島に話を聞いた。 【全ての写真】矢島舞美の撮り下ろしカット
夕役をいただけたことがとても嬉しかった
――今回、出演が決まった際のお気持ちを教えてください。 お話をいただくまで観に行ったことはなかったんですけど、周りから人情ものの温かいステキな作品が多いと聞いていました。最初に簡単なストーリーを教えてもらったときにも、切ない、心温まるステキな物語だな、と。そんなお話で私が夕役をいただけたことがとても嬉しかったです。 ――脚本を読まれたときの印象はいかがでしたか。 長崎が舞台で、地元ならではの温かさのようなものを感じましたね。親族じゃないのにお隣さんも家族のように接する感じだとか。 あと、夕は友情と恋心の間で葛藤する役ということもあって、「夕、がんばれ!」という切ない気持ちになりました。すごく魅力的なお話だと思います。 ――お稽古に入る前にはどのように役作りされたんですか? 前回の公演は10年ぐらい前になるんですけど、当時の映像を見せていただいて、ひとつひとつの動きをとって見ても「こういう気持ちだから今、動いたのかな」とか、自分なりに考えていました。でも、稽古に入ると気持ちとセリフが合ってないと宅間さんにはすぐに見抜かれるんです。そして「こうしてみたらいいんじゃないか」と助言いただいて、今はやりづらかったところがどんどんやりやすくなっていっています。新しい発見もたくさんありますね。 ――具体的にいい発見だったな、と思われたものはありますか? 今まで私が出演させていただいていた舞台って、「舞台だから前を向く」とか「大事なセリフだから前を向いてやろう」ということが多かったんです。でも、宅間さんの演出は、日常で本当にそこで起こっているようにやる、ということが多くて。あくまでも相手とのやりとりを自然に見せる感じなんです。私はクセなのか、前を向いてしまうことがあるんですけど、「そこで前に行きたいんだったら相手に来てもらえばやりやすいんじゃない?」とか、自然に見えるように動きをつけてくれるんです。行動理由をつければやりやすくなりますし、それが発見でもあって楽しさでもありますね。 ――稽古場の雰囲気はいかがですか? 宅間さんは一人ひとりに考える時間をくれるんですよ。今までの現場では、「ここはこう動いて」だとか、「こういう感情でセリフを言って」というのがあるんですけど、宅間さんは「どういう気持ちでそのセリフを発してる?」って問いかけてくれるんです。 聞かれると、やっぱり「どういう気持ちなんだろう?」ってみんな考えるんですよね。だから役と向き合う時間もありますし、「相手は今こういう気持ちでセリフを発しているんだ」ということもしっかり分かります。セリフのやり取りから感じ取るだけではなく、細かく詰めていっているので、本当にゆっくりゆっくり大事に進んでいっていますが、すごくおもしろいですね。 ――きっといろんなお話をされているかと思うんですが、特に印象的だったことはありますか? 例えば「えっ!」ってセリフがあったとするじゃないですか。それは「どういう気持ち?」って言われると、みんな大体「驚いています」って言うんですけど、それ驚きは気持ちじゃないよ、驚きは状態だよ、って。その「えっ」にも嬉しいだったり、悲しいだったり、喜怒哀楽があるはずだよって。 「えっ」という短いセリフひとつをとっても大事にしなくちゃいけないな、と改めて感じました。そういうふうにセリフをもらうと受け取る側もきっと次が出やすかったり、やり取りを受ける、渡す、ということを大事にしている感じがしていますね。