「漢字が読めない」日本の識字率ほぼ100%は幻想か 見過ごされてきた「形式卒業者」の存在、注目集める夜間中学
2022年4月にスタートした三豊市の夜間中学は5月末時点で10~80代の18人が在籍する。石尾さんは小4の漢字ドリルを使って読み書きを中心に学び直しを続ける。今の目標は高校に進学し、電気工事士の資格を取ることだ。 ▽小卒80万人の衝撃 小中学校での義務教育の内容を理解していることは、人生をよりよく生きるための土台として必要不可欠だ。文部科学省は義務教育の目的の一つに「国家・社会の形成者として共通に求められる最低限の基盤的な資質の育成」を挙げている。 2020年の国勢調査では、約80万人が最終学歴を「小卒」と回答した。戦中、戦後の混乱期で教育を受けられなかった人が多いため、80歳以上は約74万人。一方、50代以下でも約2万人いた。中卒と回答した人は約1126万人。既卒者の全体に占める割合は約11%となる。 ただ、中学を卒業したとしても、十分に義務教育を受けたことを示すとは限らない。不登校を含め、年間30日以上登校しなかった長期欠席者は小中学生で約41万人に上るとのデータがある。
昼間の中学校でも勤務経験があり、今は三豊市の夜間中学で教える城之内庸仁教諭が明かす。「公立の学校現場では、明らかに出席日数や学力が足りないと分かっていても、教育的配慮の名のもと、年齢に応じて進級あるいは卒業させている実情がある。この考え方自体を見直さないといけない時期に来ている」。事実、小中学校の卒業に出席日数は必須ではない。こうした人が形式卒業者となって“無学”のまま社会に押し出されている。 ▽不登校にフォーカスする夜間中学 夜間中学は戦後の混乱期に、さまざまな事情で義務教育が十分に受けられなかった人たちを対象に誕生したが、近年は高齢者に加え、外国人労働者の受け皿としても期待される。 夜間中学は自治体が設置する「公立夜間中学」と、民間で運営される「自主夜間中学」の二つに分けられる。公立は教員免許を持った教員が指導。授業は週5日で学費は無料。全課程を修了すれば、中学卒業資格が得られる。これまでは中学を卒業していない15歳以上が入学するのが一般的だった。だが、文部科学省は2015年、形式卒業者の受け入れを認める通知を出している。