ステーブルコイン、不安定さを克服できるか
ステーブルコインとは、米ドルなどの原資産に連動することで安定した価値を維持するように設計された暗号資産(仮想通貨)で、価格ボラティリティを伴わずに暗号資産の柔軟性を提供できるとして人気を集めている(編集注:この記事でのステーブルコインは、アメリカでの一般的な定義で、日本での法的な定義とは異なります)。 ステーブルコインの大半がそうであるように法定通貨に裏付けていられていても、(他の資産や暗号資産に裏付けられている)アルゴリズム型でも、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)のような暗号資産の価格変動からの避難先をユーザーに提供することを意図して作られている。 ステーブルコインの大きな利点のひとつは、国境を越えた取引における運用効率と費用対効果だ。例えば、ステーブルコイン取引は、従来の銀行送金に比べて仲介業者がはるかに少なく済むため、海外送金に利用する場合、より安価に、迅速に行うことができる。 しかし、このようなユースケースは有望ではあるものの、ステーブルコインは必ずしもその約束された安定性を実現することができていない。近年では、ステーブルコインが原資産の価値を下回るようなデペッグが何度か発生している。 こうしたデペッグの背景には、規制当局の動き、セキュリティ侵害、分散型取引所を支えるデジタル資産プールにおける不均衡など、さまざまな要因がある。 投資家は、準備資産として保管される原資産についての透明性の欠如や、金利上昇環境における伝統的資産からのより高い利回りの魅力を理由にステーブルコインを売却している。
ステーブルコイン離れを引き起こす原因
以下、いくつかの出来事や市場環境の変化が、どのようにステーブルコインからの資金流出につながったかを詳しく見ていこう。
テラ:規制されていないステーブルコインのリスク
2022年、テラ(Terra)ネットワーク上でアルゴリズム型ステーブルコイン「UST」が暴落し、規制されていないステーブルコインに関連するリスクが露呈した。 USTの劇的な下落は、最大のステーブルコインであるテザー(USDT)に連鎖的な影響を与え、一時的に1ドルを下回る事態を引き起こした。USTは暗号資産テラ(LUNA)とUSTの両方に対する市場の期待と需要に依存していたため、市場の変動に脆弱だった。