人気漫画「ちいかわ」が“SNSでバズりまくる”意外な理由。「漫画家の権利問題」変革にも期待
作者ナガノの「さくらももこを彷彿とさせる才能」
最初にアニメを見た時、ナガノ作詞によるエンディングテーマソングを聴いて直ちに、ちいかわが一筋縄ではいかない作品であり、「ナガノはただ者ではない」と感じた。 曲のタイトルは「ひとりごつ」。「独り言を言う」の古語である。詞の内容は、日々の労働のルーティーンの憂さを、「生乾き」状態の地面の土や靴に重ね合わせている。生乾きの靴を履いている時は、とても不快である。人生は“脱ぐに脱げない生乾きの靴の不快さ”が、ずっとつきまとう。 しかし、あの感触のやり場のないやるせなさを思い出すと、なんとも言えず笑けてしまう。ナガノのそんな、思わず脱力して笑ってしまう視点や言語感覚は、さくらももこを彷彿とさせる。
この勢いで国民的アニメになる可能性も
説明が後になってしまったが、ちいかわは、2020年より、ナガノが開設したTwitterアカウントによって連載が開始された。そして2021年に大手出版社から単行本として出版。2023年12月時点で、電子版を含め累計部数が270万部を突破している。 そして2022年4月より、フジテレビ系列「めざましテレビ」内にて、アニメ版の放送が開始された。私がAmazon Prime Videoで見たアニメーションはこの作品である。 「ちいかわ」は、SNS発信の初のメガヒット作品であり、この勢いはしばらく続くだろう。もしかすると、長寿作品となり、国民的な漫画・アニメーションになる可能性すら感じる。これほどの作家が今までまったく世に出ておらず、いきなりSNSで大人気になるなんて、非常に驚かされる。ナガノさん、一体どこに隠れていたんだ? そして何歳なんだろう?
漫画家の権利が保障されていない状況を変えてほしい
そこで、下世話な私は想像してしまう。ナガノは、一体どれぐらいのお金を得ることになるのだろう? ちいかわはSNS発信であり、大手出版社の力はまったく借りずに、ヒット作品を生み出している。 DIY精神によって生まれたちいかわは、出版物やアニメ化のロイヤリティーにおいて、従来の作品とはまったく違う契約内容になるべきだ。私は「できればナガノに今までに前例がないくらいの大きなお金が支払われてほしい」と思う。 メディア企業の力を借りずに自力で世に出てきた「ちいかわ」が、欧米に比べて格段に作家の権利が保障されていないという日本の状況を変えるきっかけに、少しでもなってほしい。先日起こった、漫画のドラマ化における不幸な出来事も、根本的にはそうした日本のエンターテイメント業界の構造が原因になっていると私は思う。