タワマンを襲う巨大地震「倒壊」より怖いリスクとは?
2022年2月から、気象庁が発表する緊急地震速報に長周期地震動の階級が加わることになった。なお緊急地震速報とは、震源に近い観測点で地震の初動をキャッチし、遠く離れた場所にできるだけ早く地震の揺れを伝えるシステムである。 長周期地震動階級は被害の程度に応じて作られたもので、地震の揺れは同じでも、建物が持つ揺れに対する性質によって揺れが増幅されることなどを定量的に評価した。地震が起きた際の行動の困難さや、家具の移動や転倒などの被害の程度から4段階に区分している。 具体的には、固有周期が1~2秒から7~8秒の揺れが生じる高層ビル内の揺れの大きさを指標としている。そして気象庁により地震計で得られる「絶対速度応答スペクトル」の周期1.6秒から周期7.88秒までの最大値から、長周期地震動階級の1から4が決められている(下図)。 具体的には、「階級3」は人が立っていることが困難で、室内の不安定な家具が倒れる状況となり、「階級4」では人は全く立つことができずに揺れに翻弄される。また室内では家具の大半が激しく移動し、倒れるものが続出する。
過去の大地震では破損したオフィスビルの窓ガラスや外壁が落下する事故が多発した。現在の高層ビルでも長周期地震動による想定外の揺れが発生し、こうした被害が起きる可能性は否定できない。 ● 首都圏のビルが激しく揺れる 南海トラフ地震の影響 ちなみに、2035年プラスマイナス5年に発生が予想される南海トラフ巨大地震(想定M9.1)でも、耐震性の低い建物を倒壊させるだけでなく長周期地震動の被害が想定される。 特に、南海トラフ巨大地震の1つである東海地震の長周期地震動は、首都圏や名古屋圏の高層ビルが地盤と共振して、建設時の想定より長い時間にわたり激しく揺れ、被害を大きくする恐れがある。東日本大震災と同様に、深海底で巨大地震が起きると長周期の性質を持つ揺れが選択的に遠くの陸地まで到達するからである。 東京・名古屋・大阪など大都市圏で長周期による揺れが東日本大震災を上回ることが判明し、東海地震の長周期地震動が首都圏にもたらす揺れは東日本大震災時の揺れの3倍程度になると想定されている。そこで気象庁の新しい緊急地震速報では、立つことが難しい「階級3」以上の揺れが予想された地域に向けて発表することにしたのである。