武器バランスは多数調整中! 「モンスターハンターワイルズ」開発陣インタビュー
カプコンは2025年に、大人気狩猟アクション「モンスターハンター」シリーズの最新作「モンスターハンターワイルズ」の発売を予定している。本稿では、本作プロデューサーの辻本良三氏をはじめとした開発陣へのインタビューをお届けする。 【画像】今回筆者が体験したプレビュー版で使用したスラッシュアックスは麻痺属性の武器だったのだが、斬撃音やエフェクトの変化でOBTの時よりも数段気持ち良さが増している感覚がした。全ての内容に言える事だがOBTを踏まえたブラッシュアップにかなり力を入れている様子だったので、製品版の完成度が今から気になるところである インタビューに応えてくれたのは、プロデューサーの辻本良三氏、アートディレクター兼エグゼクティブ・ディレクターの藤岡 要氏、そしてディレクターの徳田優也氏。先日行われたオープンβテストの所感や、合わせて実施されたメディア向けのプレビューツアーで体験した新要素などを踏まえた内容を伺うことができた。 なお本作「モンスターハンター ワイルズ」の「Chapter1」部分をプレイした体験記事も別途掲載されているので、合わせて確認してみて欲しい。 ■ オープンβテスト、フィードバックを受け全力修正中 ――先日行われたオープンβテストの反応はいかがでしたか? 辻本氏:良い反響を貰っているという感覚があります。色んなご意見を頂いていますが全て目を通していまして、製品版へ向けて手を加えたい箇所も浮き彫りになっていますので、アップデートを重ねて発売日を迎えたいなと思っています。 またどのようなアップデートを行うのか等の詳細については、情報をまとめて皆さんにお伝えするタイミングや場を作りたいなと考えています。βテストの結果を踏まえた内容だけでなく、”βテストにはそもそも入らなかった部分”があったりもするので、詳しくはその機会までお待ちいただければと思います。 ――武器の使用率・使い勝手等の意見はどのような反響がありましたか? 徳田氏:武器に関するご意見は特に多く聞いています。現状お話できる範囲ですと、まず武器のバランス調整に関しましては、本作のエンドコンテンツを見越した上で数値調整をかなり入れる予定です。 また各武器の手触りの部分に関しましては、私達が思っている武器の遊び方やコンセプトが届いていないような武器が散見されましたので、そういう物に関してはしっかりと手を加えようと考えています。特に「操虫棍」「ランス」「スラッシュアックス」「片手剣」、この4種に関しては手触りの部分も含めてコンセプトを強く感じられるような調整をして行こうと考えています。 使用率に関しましては全世界的に「太刀」が人気の印象で、「太刀」と「ライトボウガン」の組み合わせが非常に多かったなと感じています。 ここでちょっと面白かったのが、海外で初めて遊ばれるプレーヤーが、最初のアルマの質問に答えて適正な武器を選ぶ場面でアメリカと欧州に関しては「操虫棍」になる方が凄く多くて、日本ですと質問を通したとしても「太刀」になるプレーヤーが多いという結果になっています。 この結果は特に分析などはしていないのですが、何か「操虫棍」に欧米の方を引き付ける何かがあったのかなと思いますね。 ――βテストでは各機種で解像度やfpsの最適化に不安の声も上がっていましたが、こちらも製品版までにさらにブラッシュアップしていく方針でしょうか? 藤岡氏:もちろん全力で対応している部分にはなるのですが、現状が完成ではないのは確かなので、今後もブラッシュアップを続けていきたいと思っています。 徳田氏:今回遊んでいただいたプレビュー版でも既に一部改善が施されてますので、ギリギリまで努力を続けたいと思います。 ――今回体験させて頂いた最新プレビュー版だと武器の攻撃音が変化して気持ち良さが増していた気がするのですがコチラも変更箇所になりますか? 徳田氏:まず前提として、OBTの段階では設定が漏れている部分などもありましたので、ヒットストップやSEが意図通りに動いていない部分もありました。今回のプレビュー版でも修正が入り変化した部分もありますので、そちらを体験して頂けたのかもしれません。 製品版に向けて全武器しっかり完成された気持ち良さを味わえる形に仕上げていますので、期待して続報お待ちください。 ■ 新たに存在が明らかになったモンスター達について ――「イャンクック」に引き続き「ババコンガ」が登場してファンは大いに盛り上がっていますが、「ババコンガ」を再登場させた意図や思い入れやこだわり等があったらお聞かせください。 藤岡氏:グラフィック面のこだわりとして、まず森に長く住むボスらしい毛並み表現や風格を出せるように作っています。 後は「ババコンガ」は色々な物を食べたり、あとはこう……少し下品な物を投げたりする、といった独自のモーション等もリアルに表現できてるんじゃないかと思っています(笑)。 徳田氏:ゲームの設計的には僕が「モンスターハンター2(ドス)」の時に初めてプランナーとして大型モンスターを担当したのが「ババコンガ」だったんですよ。 そういう意味で言うと懐かしい気持ちになりながら今回取り組めましたし、このモンスターの特徴である”キノコを食べてパワーアップする”所などはしっかり見せたいと感じていました。 ゲームの流れとしてはトリッキーな動きを特徴とする「ラヴァナ・バリナ」の後に登場する形になるので、「ババコンガ」自体は落ち着いてアクションを楽しめる形にしています。投げつけやキノコのパワーアップ・状態異常といった遊びにフォーカスしつつ、アクションとしては遊びやすいといった部分を目指して設計しました。 ――となると初心者でも遊びやすい難易度の相手になっているという事でしょうか? 徳田氏:そうですね。そこまでに学んだアクションを踏襲できるようなレベル設計を意識しつつ、「ババコンガ」の新たな個性となる”食べた物によってブレスの内容やモーションが変化する”といった所に挑戦しています。 ――今作でも「コンガ」を引き連れている様子が見えましたが、昔と同じく群れで攻撃してくる感じでしょうか? 徳田氏:そもそも「ババコンガ」自体が「コンガ」の個体と一緒に生体を形成しているという設定が初登場時の「ドス」の時から意図して作っていた部分になります。なので、当然今回も登場させるならセットで出すことは決めていた所でした。 ただ「ドス」の時と同じように何の躊躇も無く襲ってくる感じだとゲームの難易度を上げてしまう可能性があったので、今作ではゲーム全体を通して「群れの修正」と「小型モンスターの設計」に色々と制御を加えています。そのため、”乱戦にはなり過ぎないけど群感はある”といったバランスを実現できていると思います。 また同じ群れでも「コンガ」と「ババコンガ」は元々そんなに統制がとれていないという設定がありましたので、その設定を踏襲しつつ、群れとの攻防をゲームバランスに組み込めたとも感じていますね。 ――今作の新序盤モンスターとして登場する「ケマトリス」と「ラヴァナ・バリナ」の拘りポイントや、序盤ならではのレベルデザインで注意した点などをお聞かせください 徳田氏:ゲーム設計的に言うと「チャタカブラ」→「ケマトリス」→「ラヴァナ・バリナ」の順で遊んでいく事になるので、しっかりそれぞれのモンスターの立ち位置を定めています。 「チャタカブラ」ですと”点”で攻撃をしてくるようなモーションを多用していまして、モンスターの行動を見極めて自分の操作を選択していくような基礎的な部分を学べる設計となっています。プレーヤー側が攻撃できるポイントも”塊”のようになっているので、そこまで精密に狙わなくても攻撃が当たるように調整しています。 対して「ケマトリス」は広範囲の攻撃を行えつつ、属性攻撃も行ってくるデザインにしたかったので、尻尾に炎を宿すモンスターとして設計されました。 「ケマトリス」で何となくアクションの基礎を実感した状態で、次の「ラヴァナ・バリナ」は方向転換や回り込みといったトリッキーな行動を特徴とする事で「カメラ操作」などを意識させつつ、空間に麻痺状態にさせる赤い綿毛をばら撒く攻撃があるので、空間や自分の立ち位置も考えながら遊んでいただけるような設計にしています。 先ほどの「ババコンガ」と合わせて、「モンスターハンター」の全体を通してアクションを段々と習熟できるレベルデザインという部分を心掛けながら、気持ち良く遊んでもらえるような形で各々のモンスターの設計をしています。 ――「ケマトリス」と「ラヴァナ・バリナ」のモンスターデザイン面でのポイント等はありますか? 藤岡氏:「ケマトリス」は特に立ち位置が分かりやすいように要素を詰め込み過ぎないようにしていまして、尻尾のアクションに注力したデザインとなっています。 序盤のモンスターなのでそこまで威圧感は無いけど、尻尾は特徴的といったイメージを持たせられるデザインにしていますね。対して「ラヴァナ・バリナ」はトリッキーな動きをさせたいというコンセプトがあったので、足を細くしてバレリーナのような動きをさせているんですが、時折尻尾で突き刺してきたりバラを開いて綿毛をばら撒いたりなど、あえて個性的な部分が際立つようなデザインにしています。 ――今回のプレビューで最後に相対する「ウズ・トゥナ」のレベルデザインについてお聞きしたいです 徳田氏:「ウズ・トゥナ」に関しましては先述したレベルデザインのさらに先に居る存在としてデザインしています。 レベルデザイン的には「ドシャグマ」を狩猟するタイミングが本作独自のアクションやシステムの基礎を一通り学び終えるタイミングだと感じていまして。その習熟した状態でぶつかって行って欲しいのが、それぞれの個性を持った各地のヌシと呼ばれるモンスターといった形になります。 なので「ウズ・トゥナ」を始めとしたヌシ等のモンスターはもうちょっと個性に特化したようなデザインになっています。なので、基礎を踏襲した上でそれぞれのモンスターに合わせたアクションを楽しめるような形を想定しています。 ――そんな「ウズ・トゥナ」はどういった部分にこだわったモンスターになのでしょうか? 徳田氏:今回は各属性の生態系の頂点としてモンスターをデザインしていますので、「緋の森」の主である「ウズ・トゥナ」はしっかり”水”を使ったアクションを行ってくる形になっています。 水のある場所でヴェールを纏った状態だと広範囲に波を起こして攻撃して来るので、そういったパワフルな攻撃を位置取りやセクレトによる回避で躱せるかどうかを気をつけています。 後はデザインも含めて、遊びに組み込まれているのが身に纏うヴェールをどのように処理するのかですね。 無視して本体を攻撃するのか、先に剥がした方が良いのかといった選択を選んでいただくという部分も、個性の1つでありながら基礎の応用編として面白いポイントになっているのではと思っています。 今回体験して頂いたストーリー序盤の「ウズ・トゥナ」は討伐ではなく撃退という扱いだった事からも分かる通り、本当の意味でのガチガチの勝負はお預けにしつつ、まずはヌシの強さを体験できるイベントとして設計していますので、本番をお楽しみに頂ければと思います。 ■ コンセプト「人も生態系の1つ」で描かれるストーリー ――本作のストーリーでは異文化感やエキゾチックな世界観が目を惹きますが、こだわりポイントや構想の発端などがあればお聞かせください。 藤岡氏:今作のコンセプトの1つでもある「人も生態系の1つ」という部分を描きたかったのが大きいです。 変化していく天候や自然の中でモンスター達がどのように生きているのかという部分と、じゃあそんな過酷な環境の中でどう人は対応しているのか、「ハンター」も居ないのにどう生きているのかというのを描きたいと考えていました。 その中で今までにない”異文化”を描くことになるんですけども、挨拶1つとっても独自の様式美がある……といった所から考えないと中々”異文化”の空気感が出てこないので、独自の文化設定の構築にはかなり時間を使いました。 特に食生活部分の文化表現には力を入れていまして、食べ物は何を食べているんだろうか、家畜を飼うとしたらそこからどんな資源を得ているだろうか……といった設定は異文化交流をする上で大きなポイントになるので重視していました。 ――クナファ村だけでも作り込みが凄かったですが、独自の文化を築いた村が何カ所かある感じでしょうか? 藤岡氏:何カ所かはありますね(笑)。少なくとも今「クナファ村」と「アズズ」という村は紹介させて頂いておりますので、続報をお待ちください。 ――イベント中などで自由行動しているキャラクター同士が会話をはじめ、プレーヤーはそれを聞きに行く事も無視する事もできるといった形式だったのですが、この作りにはどのような意図があるのでしょうか? 藤岡氏:今作は、この世界で生きる人の描き方には特に力を入れていまして、キャラクターがただ設置されているような感覚を出したくなかったという思いがあります。 従来のNPCはどうしても「特定の場所に設置されたキャラクター」という印象が強かったのですが、今回のNPCに関しては自分のタイムスケジュールを持って動いています。ハンターと出会えば会話してリアクションを起こすし、そうでなければ各々の判断で動き回るといった感じで、より生活感が滲み出た作りになっていると思います。 徳田氏:ゲーム的に、世界観を深堀りするような表現は好む方と煩わしく感じる人が両方いらっしゃる部分だと思っていまして、「会話よりも早くクエストに行きたい!」といった方がノイズに感じない形にしつつ、この世界で自由に生きるキャラクター達にプレーヤー自身も自由意志で世界観を深堀りする体験ができるような形式を目指しました。 藤岡氏:また情報量の多い作品になりますので、全部をイベントで説明しようとすると会話イベントだらけになってしまいます。プレイのテンポ感を悪くする事を避けたかったので、マップや村の移動中に会話を挟むような形にしました。本作の雰囲気や設定を楽しめつつ、ノイズにならないような作りを意識していたというのもあります。 ――最後に、OBTを遊んだプレーヤー、発売を楽しみにしているプレーヤーに向けて一言ずつお願いします。 徳田氏:OBTで頂いた意見というのは開発は全て確認していますし、手を加えられる部分に関してはしっかり変えていこうと考えています。 プラスして、OBTやプレビュー版で触って頂いた部分は本作のほんの一部になりますので、もっと沢山の本作独自の広がりや深くなったゲーム体験などを”モンハンらしさ”を維持しながら作っていますので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。 藤岡氏:OBTでは描画の部分やfpsなどで不安に思われた方がいると思うのですが、私共でも発生した不具合やグラフィックのズレを把握しております。手を入れられる部分にはドンドンを手を入れていきたいと考えています。 ユーザーの方にも気持ち良く本作を選んでいただけるように最後まで取り組んでいきます。皆さんに素直に楽しんでいただけるような形でお届けできるように皆で頑張っておりますので、お待ち頂けると嬉しいです。 辻本氏:今回のOBTは開発的には技術検証的な側面もあったのですが、想定以上に意見を貰えた部分もあり、発売に向けてやらなければいけない事が見えました。OBTを実施して良かったなと感じています。 開発が意図していない挙動や受け入れられ方をしている要素なども明らかになりましたので、そこを重点的に手を加えつつ、具体的に何が変わるのかの部分は別途お伝えする機会を作ろうと考えています。 ただ、中途半端な状態で出すのは逆に良くないと思っていますので、早く出したい気持ちは山々ですが、次報をお待ちいただければと思います。 ――ありがとうございました。 (C)CAPCOM
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