「すしのこ」をポテチにかけると、めっちゃ美味しい? ロングセラーを再ブレイクさせた次期社長の戦術 ~タマノイ酢後編
ご飯に混ぜるだけで簡単に酢飯を作れる調味料「すしのこ」は、60年にもわたるロングセラー商品です。2024年4月1日、製造販売を手がける老舗食品メーカー「タマノイ酢」(本社・大阪府堺市)の新たな代表取締役社長に、現専務取締役の播野貴也氏が就任します。広告代理店で学んだプロモーション戦略で、売上げを落としていた「すしのこ」の再ブレイクさせた播野氏に、入社後の働き方について聞きました。 【動画】全寮制の学校で、中小企業のドロドロを学ぶ
◆祖父が倒れ、タマノイ酢に入社することに
――大学卒業後に広告代理店に勤めましたが、タマノイ酢にはどういう経緯で入社しましたか。 広告代理店に3年間勤めた後、タマノイ酢に入りました。実は、まだ戻りたくありませんでした。広告代理店の3年目は、仕事が楽しくなる時期です。プロジェクトを任され、得意先の宣伝部長にも認めてもらえるようになってきました。 5~6年は続けたいと思っていましたが、祖父が急に倒れてしまったのです。父(勤氏・現代表取締役社長)は、孫が入社した姿を見せ、祖父を安心させたかったのでしょう。父から戻ってくるように打診されました。 私はおじいちゃん子だったこともあって、会社に戻ることを決めました。祖父はすごく喜んでくれました。数年後に祖父は亡くなりましたが、一緒に過ごす時間を持てて良かったと思います。
◆ヒラ営業のつらさ、身にしみた
――タマノイ酢に入社してからはどんな仕事をしたのですか? 創業家に戻るときは、取締役で入るパターンと平社員で入るパターンがあると思いますが、私は平社員で入り、まずは工場の現場を経験しました。お酢のタンクの中に入って、目をしょぼしょぼさせながら洗っていました。 社長が伝えたかったのは、屋台骨は工場だということでしょう。私としては、広告代理店を経験したので商品開発やプロモーションをやりたいという気持ちが強かったのですが。 ――製造現場の次はどんな仕事をしましたか? その後は、ヒラの営業です。得意先は私が創業家の人間だと知りません。20代の若手が営業に行くと取引先にどのように扱われるか、厳しい現実を目の当たりにしました。 電話でアポイントを取ろうとしても「うち、B社を使っているから、いらないよ」と切られたり、やっと訪問しても「何で来たの?」「俺、忙しいから、5分で終わらせて」と言われたりしたこともあります。 しかし、粘り強くコミュニケーションをとる中で、少しずつ得意先との信頼関係を作っていきました。