金融ビジネスが激変、Apple Vision Proが「iPhoneを超える」可能性を秘めるワケ
2024年2月に米国で販売が始まった「Apple Vision Pro」が日本国内でも2024年6月28日に発売された。フィンテックコミュニティとして先端技術と金融ビジネスの研究を担うFINOLABでは、一足先に米国で入手したデバイスを試験的に利用し、活用の可能性について議論した結果、このデバイスが「iPhone」を超える存在になり得る可能性を秘めているという結論に達した。本稿では新しいデバイスが提示する「空間コンピューティング」の可能性と金融分野での活用について考えてみたい。 【詳細な図や写真】Apple Vision Pro利用イメージ(筆者撮影)
空間コンピューティングとは何か?
空間コンピューティング(Spatial Computing)とは、物理的な環境とデジタルな情報を融合させる技術を指す。 これにより、現実世界と仮想世界がシームレスに統合され、ユーザーは空間内でデジタル情報をやりとりしてさまざまな機能を実現できるようになる。 空間コンピューティングを実現するための主要な要素技術および実装内容は、以下のようなものとなっている。 空間コンピューティングの要素技術 ・センサー技術 環境を認識するためにカメラ、GPS、加速度計、ジャイロスコープなどのセンサーが必要となり、こうしたセンサーが物理空間のデータを収集し、デジタル空間に変換することになる。 ・データ処理と解析 センサーから得られたデータをリアルタイムで処理・解析する能力が求められ、これにより、ユーザーの位置、動き、周囲の物体の位置や形状などを正確に把握することができる。 ・ユーザーインターフェース ユーザーが直感的に操作できるインターフェースが重要となる。これには、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)のデバイスや、音声認識、ジェスチャー認識などの入力に必要な技術が含まれる。 ・デジタルツイン 物理的なオブジェクトや環境の正確なデジタルレプリカを作成し、これをリアルタイムで更新・操作することができる技術となる。 空間コンピューティングの実装 ・拡張現実(AR:Augmented Reality) 現実の視界にデジタル情報を重ねる技術で、スマートフォン、タブレット、ARヘッドセットなどを使って、リアルタイムで情報を表示することになる。 ・仮想現実(VR)(Virtual Reality) 完全にデジタルな環境を作り出し、ユーザーがその中に没入できる技術で、VRヘッドセットを用いて、ユーザーは360度の仮想空間を体験できる。 ・複合現実(MR: Mixed Reality) ARとVRを融合させた技術で、現実世界と仮想世界が相互に影響し合う環境を作り出す。 ・コンピュータビジョン カメラやセンサーを使って環境やオブジェクトを認識・追跡する技術で、これにより、空間内のオブジェクトの位置や動きを把握する。 ・空間マッピング: 周囲の環境を3Dマップとして作成・更新する技術で、デジタルオブジェクトを現実世界の特定の位置に配置することが可能となる。