スポーツカーの原点「メルセデス・ベンツ SL」70年の輝かしい歴史
300SLロードスター/W198(1957-1963年)
1957年には、ガルウィングクーペに続いて300SLロードスター/W198が登場した。先述の300SLガルウィングクーペ/190SL同様に、この車もマクシミリアン・エドウィン・ホフマンの主導で造られた。特に乗降において、文字通り高い敷居となっていたサウドシルを下げるため、フレームは再設計。ドアは前開きに、ウインドウも開閉可能となった。1961年頃からこれまで大型のアルフィンドラムであったブレーキを前のみディスクに改良。当時のロードスターの発売価格は3万2500マルクだった。ここにラグジュアリーなロードスターが誕生し、現代のSLに続く豪奢なロードスターが完成した。
300SLは、ガルウィングクーペが1954年8月から1957年5月まで1400台生産され、ロードスターが1957年2月から1963年春までに1858台生産された。価格的にも手頃な190SLは、1955年から1963年春まで2万5881台生産された。アメリカでは現在、愛好家の集い・ガルウィングクラブが盛んに活動している。
2代目SL/W113(1963-1971年)
1963年3月14日~24日まで開催されたジュネーブモーターショーで、メルセデス・ベンツ230SL/W113が発表された。
当然、2代目に対する世間の期待は非常に高かったが、1955年のル・マンの悲劇以降レース活動から手を引いたメルセデスは、「SL」を快適なツーリングスポーツカーへと変貌させた。
この2代目の230SL/W113は先代の300SLロードスター/W198と190SL/W121の2台に取って代わるもので、排気量2306ccの直6気筒SOHCエンジンを搭載し、150PSを発揮する高性能を備えた快適な2シーターツーリングカーとして注目を集めた。そのデザインは巨匠フリードリッヒ・ガイガーの指揮の基、フランス人デザイナーのポール・ブラック(1957年 – 1967年在籍)によって作成された。
このW113は「パゴダ」と呼ばれるが、これはオプションのハードトップがヘッドクリアランスを取るべく、内側に湾曲したルーフになっていて、その形状がアジアの寺院の建物を連想させたことから名づけられたことによる。デザイン担当のポール・ブラック氏は在籍中にW111/W112を皮切りに、W113、W100、W108/W109、W114/W115の「縦目のベンツ」シリーズを構築した。