●　やりたいことがはっきりしていない人は 大手企業に就職するのもアリ 　――就職をこれからするような大学生に向けて、今のカツセさんだったら「こういう視点で会社を選ぶよ」というアドバイスはありますか。 　会社選びは、物件選びと一緒だと思うとわかりやすいと思います。何にこだわるかがポイントで、駅近なのか、独立洗面台なのか、新築なのか、ベランダありなのか、「これだけは譲れない」っていうポイントを決めたうえで、会社選びをするのがいいと思います。 　そのうえで、やりたいことがあんまり決まってない人は、大手企業に行けばいいと思います。大手ならじっくりと成長させてくれるし、やりたいことがないからこそ、どの部署に行ってもある程度は頑張れると思うので。 　逆に、やりたいことがはっきりしている人は、大手企業に行くと配属ガチャで失敗する可能性が出てきますから、確実にやりたいことができるベンチャー企業や中小企業に入った方が、きちんと花が咲きそうだなとは思います。

●　「無自覚な加害」を どう受け止めるべきか 　――新刊のタイトルはなぜ『ブルーマリッジ』なのでしょうか。 　元の言葉である “マリッジブルー”がこれだけ浸透しているのだから、『ブルーマリッジ』なら1発で覚えてくれるんじゃないか、という期待が最初にありました。 　それと、「ブルー」と「マリッジ」を逆転させただけなのに、こんなにも意味に広がりを感じる言葉は珍しいと思ってます。 　マリッジブルーは「結婚前夜の憂鬱」という意味ですが、逆転させたら「結婚後の憂鬱」になります。『ブルーマリッジ』はまさに憂鬱な結婚の話でもあるし、ブルーからイメージできる独特な雰囲気もあって、このタイトルはとても気に入っています。 　ほかにも何十案もタイトル候補があったのですが、悩みに悩んで、最後に『ブルーマリッジ』が出た途端に、最初からこれしかなかったねと思えるような収まりの良さを感じたので、もう疑いなく『ブルーマリッジ』に決定しました。 　――結婚だけでなく、様々なテーマが描かれているなと思いました。この作品を書こうと思われたきっかけは。 　明確なきっかけはないですが、7～8年くらい前からジェンダーやフェミニズムに関連する本を読む機会が増えて、そうした知識をインストールしていくなかで、自分の過去の言動を省みることも増えていきました。 　10代、20代の頃の自分の言動があまりにひどかったり、Webライターとして書いた記事の内容があまりに差別的だったりして、今になってそのことを強く後悔するんです。 　でも今さらそのことを謝りに行くにしても、被害者はどこにいるかもわからなかったり、そもそも勝手に謝ったとしても、それってただ許されたいと思ってるだけで、加害者の傲慢にすぎないっていう感覚があって。 　じゃあ、この加害していた事実をどう受け止めながら未来を生きればいいんだろう、みたいなことを考える機会が本当に増えてたんですよ。それで、これは一度、物語にしないと先に進めないというか……書いても答えは出ないですし、実際今でも迷子のままなんですけど、一回書いてみようって思ったのがきっかけでした。 　それで「無自覚な加害」を社会のマジョリティーである男性が背負った時にどうなっていくかを描いた物語ができました。 　――読み進めていくうちに、ある人物の「無自覚な加害」が発覚するシーンは衝撃的でした！ 　嬉しいです。絶対的な正義って存在しないと思ってるんですよ。人って常に揺らいでいるものなので、良いとこも悪いとこもある。良いことだけする日もあれば悪い事しちゃった日もあるっていうのが絶対にあるので、それを書こうと思っていました。 　この物語の登場人物と同じように、誰かをわずかにでも傷つけてしまった過去を持つ人には、ぜひ読んでもらいたいと思ってます。