最も衝撃であるはずのラストが自然な流れだった…『わたしの宝物』美羽が追い出された“その先”を描く第7話
女優の松本若菜が主演するフジテレビ系ドラマ『わたしの宝物』(毎週木曜22:00~ ※TVer・FODで見逃し配信)の第7話が、きょう28日に放送される。 【写真】宏樹(田中圭)を見る真琴(恒松祐里) 夫以外の男性との子どもを夫の子と偽り産み育てる「托卵」をテーマにした今作。前回放送の第6話では、ついに本当の父ではないと知った夫が子どもを引き離し、妻を追い出した。本当の母はどこへ行ってしまうのか、そして血のつながらない父と本当の父の行く末は――。
■血縁関係のない宏樹が子どもを引き取るまさかの展開 今作における各回のラストは、どの回を振り返っても想像を超えるものばかりだったが、“意外性”という点で前回のラストは出色だった。なぜなら誰もが想像していたであろう、「托卵」の末の家族のあり方…美羽(松本若菜)が宏樹(田中圭)と離婚し、本当の父である冬月(深澤辰哉)と結ばれるのではなく、美羽と宏樹がやり直すでもなく、はたまた美羽が一人で子供を育てるというわけでもない。まさか血縁関係のない宏樹が子どもを引き取り、美羽を追い出してしまうというものだったからだ。 この展開は、ともすれば次回へ視聴者を引き付けるためだけのインパクト重視、共感できない突飛な展開に見えてもおかしくなかったのだが、ここまで宏樹の心情を丁寧過ぎるほどに描写してきた効果で、衝撃であるはずのラストが最も自然な流れだと感じさせることに成功した。それと同時に、想像していたどの選択肢よりも最も厳しい展開だったからこそ、美羽の犯した罪への“天罰”を象徴的に描くことにも成功したのだった。 ■“罰と気付いていない罰”という異様な構図 さて今回の第7話は、宏樹が血縁関係ではない子・栞を引き取り、美羽が家を追い出されてしまった“その先”が描かれるのだが、登場人物それぞれの“罪”を振り返ることで、それによる“罰”と“贖罪”がより鮮明に映る構造となっている。 美羽は、たった一日だけの過ちである不倫…その“罪”から地獄のような末路、「托卵」というとてつもなく大きな“罪”へ膨れ上がり、その結果として自分の子が奪われてしまうという最大の“罰”が下ってしまった。 一方の宏樹は、子どもが生まれる以前の宏樹…美羽を顧みなかったことが“罪”なのだが、まさかその“罰”として待ち受けていたのが、自分の子ではないにもかかわらず父性を持ち、“変わってしまったこと”なのが実に皮肉だ。 美羽の友人・真琴(恒松祐里)の“罪”は、美羽の事情を暴露してしまったことであり、冬月の同僚である水木(さとうほなみ)にも、彼が事故で亡くなったと偽った“罪”を抱えている。彼女たちのこれからの物語は“罰”なのか“贖罪”なのか。 そしてここまで、第1話で描かれた最初の“罪”のみで、一向に“罰”や“贖罪”のターンに差し掛からないのが、「托卵」の中心人物である冬月だ。しかし“何も描かれないこと”、それこそが逆にその“罪”をより明瞭にさせ、美羽や宏樹に下された激動の“罰”とは対照的に、ここへきて一つ一つの小さな事象が冬月をジワジワと苦しめる…“罰と気付いていない罰”という構図が、とてつもなく異様で怖ろしい。 今回の第7話では、これまでの“罪”から、どんな“罰”と“贖罪”が描かれるのか。注目してほしい。 前回、宏樹が子どもを引き取るという一つの区切りを見せたことで、ドラマが終盤に向けて広げた風呂敷を畳みにかかり、静かなクライマックスへと向かうのか?……とも思っていたのだが、やはり今作はそうはさせない。冬月がまだ気が付いていない“最大の罪”が明かされる瞬間が、もうそこまで来ている。
■ 「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平 おおいしようへい テレビの“視聴質”を独自に調査している「テレビ視聴しつ」(株式会社eight)の室長。雑誌やウェブなどにコラムを展開している。特にテレビドラマの脚本家や監督、音楽など、制作スタッフに着目したレポートを執筆しており、独自のマニアックな視点で、スタッフへのインタビューも行っている。
「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平