米大統領選、トランプとハリス「鉄道政策」の争点 バイデンが進める鉄道復権の動きは継続するか
■高速鉄道推進派は民主党左派のみ この鉄道関係の予算を後押ししたのは、バイデン大統領個人というよりも与党民主党の中の左派と呼ばれるグループである。バーニー・サンダース議員、アレクサンドリア・オカシオコルテス(通称AOC)議員らが率いるこのグループは、厳しい環境政策の推進を要求しており、交通ネットワークに関しては鉄道の復権を切り札としている。彼らの主張は徹底しており、中距離と短距離の国内航空網を廃止する代わりに、高速鉄道ネットワークを拡充せよとしていた。
これに対して共和党は激しく反発しており、バイデン大統領もコロナ禍によるダメージから交通網を復興させるという特別法の趣旨に照らして、この2021年の歳出法では高速鉄道構想には大きな金額が割かれることはなかった。ちなみに、2023年にAOC議員は来日して東海道新幹線に試乗し、その性能と環境負荷の軽減効果を絶賛している。また、若者向けに新幹線の乗り心地についてSNS動画での発信も行った。日本やアジア、欧州では全く常識となっている都市間輸送のための高速鉄道だが、アメリカにおいては、積極推進派は議会でも最も左派のグループに限られるという厳しい状況がある。
今回、2024年の大統領選においても、この対立構図は変わっていない。ハリス候補は、アムトラックのヘビーユーザーであったバイデン氏とは違って、鉄道好きをアピールすることはしていない。だが、左派の環境政策も理解しており、オバマ、バイデン路線でできた鉄道復権の流れを継承する姿勢だ。 一方で、トランプ候補の方は、現時点では詳細な政策パッケージを公表していない。そんな中で、候補自身が賛同しているとする保守系シンクタンクの政策提言「プロジェクト2025」が政策大綱の位置づけとなっている。この提言では、連邦運輸省傘下の交通局(FTA)を縮小するとともに地方交通機関への補助金に大ナタを振るうとしており、過激なまでに反鉄道の姿勢が書かれている。