大ヒット連発!韓国ドラマの底力とは
お話を聞いた方:山崎敦子さん ライター。旧作から新作まで幅広いジャンルの韓国ドラマを網羅する。K-POPや韓国ミュージカルにも詳しい。 【記事中の画像をすべて見る】
世界的な動画配信サービスが確立したことでますます高まる韓国ドラマブーム。その流れに拍車をかけているのが〝リアルタイム感〟だと山崎さんは分析する。「最近ではSNSを通じていち早く情報をキャッチできるので、韓国でのドラマ放送と同じタイミングで海外でも盛り上がりを実感できる機会が増えました。これが、ブームに火がつきやすい要因のひとつだと思います」 2024年上半期に大ヒットしたドラマ『涙の女王』と『ソンジェ背負って走れ』も、韓国での放送とほぼ同時期に日本でも話題に。 「どちらも早くから期待されていました。この2作品に共通しているのはロマンス、コメディ、サスペンスといったさまざまな要素が絶妙なバランスで盛り込まれていること。それでいて気楽に視聴できるタッチの作品なので、幅広い層に受け入れられました」 『涙の女王』は『星から来たあなた』『愛の不時着』の脚本家、パク・ジウンが手がけた新作で、彼女の名前が挙がっただけで名作誕生を予感した人は多かった。 「財閥、格差婚、記憶喪失、難病といった韓国ドラマが得意とするモチーフをすべて詰め込んだ上で、洗練された脚本に仕上げるパク・ジウンの筆の力が素晴らしい。キム・スヒョンといえば泣きの演技ですが、今作では、セリフとは裏腹の本音を抱えていることがちょっとした表情から伝わる演技がお見事でした」 『ソンジェ背負って走れ』では、ヒロイン・ソル役のキム・ヘユンに着目。 「彼女は相手役の感情を引き出すのがうまいんです。ロウンとイ・ジェウクも、彼女と共演した『偶然見つけたハル』から脚光を浴びました。『ソンジェ背負って走れ』ではソンジェ役のビョン・ウソクがソルを包み込む、身長差を生かした構図が二人の関係を表しているようでした。細部まで作り込まれていて、何度観ても違う楽しみ方ができる作品です」 今の勢いは、脚本家や俳優の層の厚さも大きく寄与しているという。 「韓国はコンテンツ産業を外貨獲得の柱と考え、国が投資をしています。まさに『お金があるところに才能は集まる』という言葉どおり、俳優や脚本家だけでなく、ドラマにかかわるスタッフ全般に優秀な人材が集まりやすい土壌が整っています。〝やりがい搾取〟と言われていた昔と違い、今はギャラが事前に提示され、きちんと契約した上で撮影に入るそう。また、現場の環境も改善されて、以前のように過酷な状況下で作品作りをすることもなくなりました。国内の視聴者たちの見る目が厳しいこともあり、実力が鍛えられるのは確かですね」 ジャンルの豊富さも魅力。 「悩める自分の背中を押してくれるようなドラマも多く、観終わった後、ポジティブな気持ちになれるんです。韓国ドラマが人生に加わると、毎日が豊かになりますよ。好みの作品がきっと見つかるので、まずは興味を持った俳優や脚本家の作品から観てみてください」